せっかくだから同じようにしてみた。店員と目が合い「Caffè」と注文。すると出てきたのは、見るからにクリーミーなカプチーノだった。ブリオッシュをひとつ取り支払うと、空いている場所へ移動する。隣でスマホを手にカプチーノを飲んでいた男性に英語で話しかけてみた。「Caffèと言うとこれ(カプチーノ)が出てきたんだけど」。すると彼は、なに言ってるんだこいつ、といった表情で「もちろん」と答えた。
「朝はカプチーノさ。午後はエスプレッソだけどね」
「どうしてカプチーノなの?」
「さぁ…。昔からみんな朝はカプチーノだね。でも昼を過ぎるとエスプレッソしか飲まないな。ディナーの後もエスプレッソを飲むよ」
そういうと「チャオ」と言い、店を出ていった。きっと仕事に向かったのだろう。
ボローニャの街角で触れたそんなイタリアの朝の風景は、この後、どんな田舎町に行っても見掛けることができた。イタリアにはあらゆる場所にBARと呼ばれるカフェがある。座席もあるが、誰もがカウンターでエスプレッソを愉しみ、さっと出ていく。BARはイタリア全土に10万軒以上あるらしく、どんな小さな町にも存在する。デミタスカップに入ったエスプレッソに砂糖をたくさん入れ、さほど混ぜずにクイクイッと飲む。最後に、底に溜まったエスプレッソが染み込んだ砂糖をスプーンで口にする人もいる。