2021年の今、改めてW463型の初代Gクラスに触れてみると、街乗りをメインに開発されたヤワなSUVはもちろんのこと、リアルオフローダーを名乗る他のクロスカントリー4WD車さえも軽く凌駕する、独自の“本物感”に圧倒される。それは、機能第一の軍用車両をバックボーンに持つ正統派だからにほかならない。
機能的な形状のドアハンドルを握り、タッチが少し重めのボタンを「カチッ」と音がするまで押すと、「ガチャ」という音がしてロックが外れドアが開く。続いて、運転席に乗り込んでドアを閉めると、今度は重い金庫の扉を閉じた時のように、「ガチャリ」という鈍い金属音が車内に響き渡る。ドアの開閉という何気ないアクションも、Gクラスの場合、重厚な儀式のように思えてくる。
走り始めても、そうした印象は変わらない。40年以上前に誕生したモデルとは思えないほどボディが実にしっかりとしていて、舗装の行き届いた現代の道を走る限り、「ミシリ」という音を立てる気配など一切ない。その道のプロが過酷な悪路を走り回っても音を上げぬよう、開発陣が「これでもか!」とばかりにボディを鍛え抜いている光景が目に浮かぶようだ。
足回りの印象も、洗練され尽くした現代のクルマとはひと味もふた味も異なる。路面の段差を乗り越えたり、舗装の荒れた道を走ったりすると、時折、ラダーフレームに支えられたボディが揺すられることがある。とはいえ乗り心地は良好で、いかにもラダーフレームを備えたリアルオフローダーらしい、ソフトでゆったりとした乗り味が特徴だ。また、ボール&ナット式のステアリング機構はある程度の重みがあり、ねっとりとしたフィーリングをドライバーに伝えてくる。これを古くさいと捉えるか否かだが、軽く回せるラック&ピニオン式にはない味わい深い操舵感は他に代えがたいものがある。
そうした古典的な味わいを残しつつも、随時アップデートが図られたエンジン&トランスミッションは力強い走りを味わわせてくれる。例えば、モデルサイクルの末期に投入された3リッターのクリーンディーゼルエンジン搭載車などは、最高出力244馬力、最大トルク600N・mを発生するだけあって、十分過ぎる速さを披露。変速ショックのない7速のオートマチックトランスミッションと相まって、車両重量が2500kgを超えるヘビー級の車体をグイグイ前へと押し出す。その重厚な加速フィールも、Gクラスの本物感を強める大きな要素となっている。