街そのものをキャンパスとして、道路や壁、標識などに落書きするグラフィティアート(ストリートアート、ミューラルとも)。文字や記号、絵など、その手法はさまざまで、無許可でペンキやスプレーで描くことから迷惑行為とも違法行為ともされてきた。そのため、グラフィティアートの多くは人目に触れない深夜にひっそりと行なわれ、ほとんどのアーティストは正体を隠して活動している。
世界で一番有名なグラフィティアーティスト、バンクシー(Banksy)も、正体不明な人物のひとり。彼について分かっていることと言えば、イギリス西部の港湾都市、ブリストル(Bristol)出身だということ。顔はおろか、どんな経歴で何のために絵を書いているのか、バンクシー本人とその側近以外は誰も知らない。ただひとつだけ分かるのは、彼の作品は社会に対しての風刺であり、皮肉を込めたメッセージだということ。
そんなバンクシーの作品は、イギリスはもとより世界中で見つかっており、中には約1億5500万円もの値段がオークションでついたものもある。とはいえ、バンクシー自体はオークションによって高値で売買されることを是とせず、落札後された絵が額縁に隠されたシュレッダーで粉々になるというパフォーマンスも行なっている(オークション会場のサザビーズでは、突如シュレッダーが動き、皆があっけにとられたほど)。