突然だが、BMWと聞いてどんなことを思い浮かべるだろう? 高級車、高性能セダン、はたまた昨今人気のSUV…と、その答えは十人十色だろうが、BMWマニアやクルマ好きの中には “直列6気筒エンジン“を思い浮かべる人も多いのではないか?
“直6”や“ストレート6”とも呼ばれる直列6気筒エンジンは、BMW車を語る上で外せない存在だ。同社が直6を初めて手掛けたのは1933年のことで、BMWにとって初の自社開発オリジナルモデルとなる「303」に、2リッターの直列6気筒エンジンが搭載された。ちなみにこの303、直6と並ぶBMWの象徴であるフロントの“キドニーグリル(Kidney=腎臓)”を初めて採用したモデルでもあり、まさに記念碑的な1台といえる。
そして第二次世界大戦後、他社が大型セダン向けにV型8気筒エンジンの開発に舵を切る中で、BMWはそれまでと同様、直6の開発を推進。新しいフラッグシップセダンに搭載された2.5リッターの直列6気筒エンジンは市場で高い評価を得る。以降もBMWは、ストレート6開発の手を緩めることなく、現在に至るまで数々の名機を世に送り出してきた。
しかし、他メーカーも同様の構造・機構を持つエンジンを開発・製品化してきたにもかかわらず、なぜBMWだけ評価が抜きん出ているのか? その秘密は、BMWのストレート6が、格別な回転フィールを備えているからにほかならない。直列6気筒エンジンというのは、理論上、慣性力に起因する振動などが発生しない“完全バランス”の上に成り立つユニットだが、特にBMWのそれは、どこまでも回りそうなくらいスムーズな回転上昇と、優れた静粛性で他社を圧倒した。そのシルクのように滑らかな回転フィールは絶品で、人々は称賛の意味も込め“シルキーシックス”と呼んできた。
そんなBMWの直6を語る上で、どうしても外せない1台がある。それが、名機を搭載した3代目(E46型)の「M3」だ。