一世紀以上も変わらぬ灯り。ドイツ生まれのハリケーンランタン「Feuerhand Lantern」

一世紀以上も変わらぬ灯り。ドイツ生まれのハリケーンランタン「Feuerhand Lantern」

100年以上経った今でも、愛され続けているランタンがある。ドイツの銘品「Feuerhand Lantern (フュアハンドランタン)は、1893年にドイツ人技師のヘルマン兄弟とエルンストニーア兄弟の手によって誕生し、1902年には生産拠点となる「Hermann Nier Feuerhandwerk」を立ち上げ、1914年に「Feuerhand」の商標を取得。一世紀以上続くロングセラー、フュアハンドランタンが生まれた。

ドイツで生まれ、今なおドイツで作り続けられているフュアハンドランタン

フュアハンドランタンは「台風や嵐が吹いても火が消えない」ランタンとして評判を集め、いつしか「ハリケーンランタン」と呼ばれるようになった。当時はまだ電灯が普及しておらず、一般家庭はもちろん軍用としても重宝され、その実力は世界にも広がり、1926年には「Firehand」の商標でアメリカでも登録されるまでに成長。誕生から約30年で、名実ともに世界ナンバーワン灯油ランタンとなる。

 

日本でも購入できる「Feuerhand Lantern Baby Special276(フュアハンド ベイビースペシャル276)」は、当時から作り続けられている同ブランドの顔。構造はそのまま、ボディーには亜鉛メッキが施され、さまざまなカラーリングで展開されている。製造はすべてドイツHohenlockstedt(ホーエンロックシュテット)の同社工場によるもの。100年以上続く「Made in Germany」が何とも誇らしい。

 

フュアハンド ベイビースペシャル276の構造について見ていこう。このランタンは灯油もしくはパラフィンオイルを燃料とする。燃料が芯に染み込むことで火が灯り、温められた空気が上部から放出される。一方で新鮮な空気が両サイドのチャンパー(管)を通ってバーナーに送り込まれ、燃焼が促進される仕組みだ。

火力調整ハンドルを回すと芯(ウイック)が出てくる。毛細管現象によって灯油が芯を伝わって先端まで染み込む。
燃料として使用するパラフィンオイル。もちろん、灯油も使えるが、煤(スス)が出てしまい、後片付けにちょっと手間がかかる。高純度石油系燃料のパラフィンオイルを使えば、黒ずむこともないので楽。

シンプルな構造ゆえ、修理は専門知識なく行なえる。メンテナンスも難しいことはない。それゆえ、昔は一般家庭の必需品だったものが、今ではアウトドアズマンが好んで使うようにもなった。現在では同じくドイツを本拠地とするペトロマックス社がフュアハンド ランタンの製造権利を持っており、ペトロマックスの加圧式灯油ランタンと合わせて市場を牽引。世界中のアウトドアズマンがペトロマックス“グループ”のランタンを使用している。なお余談だが、フュアハンドと人気を二分する存在が、1840年にアメリカ・ニューヨークで誕生した「DIETZ」。こちらは現在、中国で製造されている。

アウトドアユースとしてのフュアハンド ベイビースペシャル276

昨今のキャンプブームでは、さまざまなスタイルが生まれている。まるでホテルのようなグランピングや、サバイバル的に過ごすブッシュクラフト。はたまたひとりで楽しむソロキャンプなど、実に多彩だ。テントひとつとってもかつてのオールドスクールなロッジ型、ベーシックなドーム型だけではない。

 

インディアンが使うようなティピー型や、まるでサーカステントのようなベル型、ツーポール型。投げるだけでそこそこ立つ、ポップアップテントなども新しい。まさに日進月歩なアウトドアシーンにおいて、化石のようなフュアハンド ベイビースペシャル276は、クラシックスタイル・ブッシュクラフト寄りの人たちに愛用されている。

 

LEDライトやガス&ホワイトガソリンランタンと比べて圧倒的に光量が小さい。ゆえに、メインランタンとして便利かと言えば、そうではない。キャンドルランタンと同じぐらいなのが、フュアハンド ベイビースペシャル276だ。それでも前述のような高性能ランタンだと明る過ぎる。ムードを大事にしたいという人たちが好んで使用している。

 

焚き火の灯りを中心に、手元を照らすのはフュアハンド ベイビースペシャル276。使うごとに風合いも増していく、まさに相棒とも言える存在。何でも高性能なものが良いわけではない。小さな灯りはそう語っているかのようだ。

ボディーの色で、火を灯したときの雰囲気も変わる。限定色も出ており、プレミアランタンとして人気が高い。2020年はパールブラックベリーだった。


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