ユネスコ世界遺産、英国式聖地巡礼の旅「カンタベリー大聖堂」

ユネスコ世界遺産、英国式聖地巡礼の旅「カンタベリー大聖堂」

イングランド国教会の大本山、イギリス ケント州のカンタベリーにある「カンタベリー大聖堂」。正式名称は「Canterbury Cathedral, St. Augustine’s Abbey, and St. Martin’s Church」だが、地元の人たちは親しみを込めて「Cathedral(大聖堂)」と呼ぶ。

 

カンタベリー大聖堂の歴史は古く、ノルマン朝の初代イングランド王、ウィリアム1世(1087年没)の命にて建立され、ウィリアム1世の死後、1130年に完成した。元々はローマ・カトリック教会の一部だったが、1534年にローマ教皇庁からイングランド国教会が独立。カンタベリー大聖堂はイングランド国教会の総本山となった。なお、イングランド国教会の首長は現エリザベス女王(エリザベス2世)である。

 

見るも美しく、重厚な佇まいのカンタベリー大聖堂は、補修工事を繰り返しながらも当時のゴシック様式建築を維持し、中を訪れると、まるで中世にタイムスリップしたかのような錯覚を抱くほど。

聖人像、ステンドグラスも魅力のひとつ

カンタベリー大聖堂には聖人やギリス国教会のシンボルとなった人たちの像が所狭しと並び、中には現在エリザベス女王と、フィリップ殿下(エディンバラ公)を見ることもできる。

 

また、大聖堂内には数多の聖人が祀られており、中でも有名なのがトマス・ベケットカンタベリー大司教(1170年没)が暗殺された場所。トマス・ベケット大司教の死後、「大司教が夢に出てお告げを聞いた」「大司教が病や傷を治してくれた」などの奇跡が起き、カンタベリーへの聖地巡礼はより一層の賑わいをみせるようになったという。

 

トマス・ベケット大司教への巡礼に向かった人たちが、暇つぶしにそれぞれの話を語りあったのが、かの有名な『カンタベリー物語(14世紀・ジェフリー・チョーサー著)』。岩波書店から『完訳カンタベリー物語』が出ているので、興味がある人はぜひ手にしてみてほしい。

大聖堂は色鮮やかなステンドグラスも魅力のひとつ。この場所ではないが、トマス・ベケット大司教暗殺の場面もステンドグラスで見ることができる

大聖堂を見た後は、ボートに乗って市街地ツアーを

そんな古都カンタベリーは、古い町並みも魅力のひとつ。石畳のメインストリートには歴史ある建造物が所狭しと並び、パブやレストランとして今なお使われている。町中を流れる川のボートツアーを利用して、ガイドの軽快な歴史トークと合わせて中世カンタベリーに思いを馳せるのも一興だ。

ボートツアーで、とくに人気なのが川に向かって飛び出した水責めの椅子「Ducking Stool」。中世イングランドでは、見せしめのための懲罰として全国各地にあったほど。その名残? なのだろうか、カンタベリーを訪れる人たちのフォトスポットとなっている。

観光用ボートの上に見えるのが水責めの椅子「Ducking Stool」。桟橋から触れることもできるが、もちろん使うことはない。なお、歴史あるパブのすぐ横にあり、酔っ払って使ったりしないのかな? と思うほど。

かつての牢獄は今はパブ!? カンタベリーの入り口「ウエスト・ゲート・タワー」

筆者は学生時代をこの町で過ごし、卒業してからも4年に一度訪れては旧友と親交を深めている。カンタベリーにいる時は昼夜問わずパブをハシゴしているが、訪れるパブのほとんどが「数百年前から続く店」「この建物は、中世に建てられたものだ」など、その都度、酔客たちの歴史話に驚く。

 

カンタベリーの地元民たちは、今なお使われているのが当たり前かのように歴史的建造物と接しているので、とくに貴重だという感情が見受けられないほど。「おいおい、飲みすぎて寄っかかっているその壁、歴史的価値が高いものなのでは…」と、パイントビールを片手に笑い話になることが多い。

 

写真下の庭園の先に見える石造りの塔は、カンタベリー市街地への門「ウエスト・ゲート・タワー」。かつては殉教者たちがこの門をくぐり、また、牢獄としても使われていたいわくつきの塔だが、今は牢屋テイストなパブになっており、若者たちで賑わう。

日本だと京都、奈良、鎌倉に近い印象を持つイギリス、カンタベリー。とは言え、街全体としてはさほど大きくなく、1時間あればぐるりと回れるほど。ロンドンからも電車で1~2時間ほどとアクセスも良好。歴史好きにはぜひともおすすめしたい。なお、パブとB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)が同じ店というのも珍しくないので、飲んで寝て、また飲んで、ちょっと観光もという過ごし方もアリだ。

カンタベリーの地元民たちは、今なお使われているのが当たり前かのように歴史的建造物と接しているので、とくに貴重だという感情が見受けられないほど。「おいおい、飲みすぎて寄っかかっているその壁、歴史的価値が高いものなのでは…」と、パイントビールを片手に笑い話になることが多い。

写真下の庭園の先に見える石造りの塔は、カンタベリー市街地への門「ウエスト・ゲート・タワー」。かつては殉教者たちがこの門をくぐり、また、牢獄としても使われていたいわくつきの塔だが、今は牢屋テイストなパブになっており、若者たちで賑わう。



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