アウトドアギアと言えば、今も昔もヘビーデューティーなもの。過酷なフィールドで耐えられるつくりかどうかは、登山家をはじめとしたあらゆるアウトドアズマンにとって、選びの基準になっている。とくにバックパックを背負って何日も歩くような旅では、「壊れない」「すぐに使える」「持ち運びやすい」、この3要素が非常に重要だ。
今でこそアウトドアメーカー各社から機能性にすぐれた最新のギアが数多くリリースされているが、その一方で、およそ半世紀前のギアが現役で使われているのだから、アウトドアギアはおもしろい。このトランギア製アルコールバーナーもそんなクラッシックなギアのひとつ。シンプル&タフなつくりは、時代を超えて世界中のアウトドアズマンに愛用されている。
トランギア社は、1925年にスウェーデン中部のTrångsviken(トラングスヴィッケン)で創設された。トラングスヴィッケンは首都ストックホルムから北西に約250kmに位置する小さな田舎町。彼の地で創業者John E.Jonsson(ジョン E. ヨンソン)が家庭用クックウェアを手掛けたのが同社のはじまりだ。1930年代になると、ヨーロッパ諸国で労働者の有給制度が取り入れられるようになり、スウェーデンでも余暇を自然のなかで過ごす人たちが増えた。このときから、トランギア社は野外で使えるアウトドアギアを製造販売するようになる。
1950年以降、同社が手掛ける軽くて使い勝手が良いアルコールバーナー(ポケットストーブ)、クッカー類は、スウェーデン軍をはじめ、ドイツやスイスの軍隊でも導入されるなど、市場を拡大していく。当時のスウェーデン軍で使用されていたトリプルクラウンの刻印入りビンテージは、コレクターズアイテムとして今なお人気が高い。
トランギア製品は、今も昔も創業の地、トラングスヴィッケンで製造されている。アルコールバーナーはスウェーデンの職人たちによって手作業を含む工程でつくられているため、多少の個体差があるのも味わい深い。また、長く使用しても壊れない(壊れにくい)のも、タフ&シンプルならでは。
使い続けることによってボディーの風合いが増すのも、旅の思い出を刻み続けるかのよう。ただし、中に入れたアルコールがこぼれないようにするゴムのOリングは経年劣化するので、適時交換が必要なことを付け加えておく。