「ドクターマーチン、UKカウンターカルチャーのシンボリックな存在」

「ドクターマーチン、UKカウンターカルチャーのシンボリックな存在」

ファッションのみならず、カルチャーアイコンとしても有名な「Dr.Martens(以下ドクターマーチン。足の指を保護する硬いスチールトゥに、柔軟性と耐久性を併せ持つソールが特徴のこのワークブーツは、いつしかロンドンの若者たちが好んで履くようになった。

セックス・ピストルズ、ザ・フー、クラッシュなど、名だたるブリティッシュバンドが“労働者の象徴”たるドクターマーチンを履いて演奏し、キッズたちはプレイヤーに憧れてドクターマーチンを履くようになる。

油やガソリンなどでも滑らない。それでいて軽くて歩きやすいブーツとして人気を博した。ソールには「MADE IN ENGLAND」の文字が。

その後、シャツやポロシャツにサスペンダーを組み合わせ、頭を丸刈りにしたスキンヘッズたちが台頭。ドクターマーチンは狂信的なカウンターカルチャーの象徴としても扱われるようになった。

シューレースを足首に何十も巻いて履くスタイルが流行(「SKINS & PUNKS」Gavin Watson/Independent Music Pressより)
左右で異なるシューレースも(「SKINS」Gavin Watson/John Blake Publishingより)
当時の様子は映画「THIS IS ENGLAND(2016/インディペンデント映画)」でも描かれている。

ドクターマーチンはドイツ生まれ。ゴムタイヤを改造したエアークッションソール

イギリスの音楽シーン、ロンドンのユースカルチャーとしてあまりにも有名なドクターマーチンだが、元々は1945年にドイツ人の医師、クラウス・マルテンスが開発したものだった。

 

クラウス・マルテンスは「スキーで怪我をした足に優しい靴を」という個人的な理由でエア・クッション・ソールを開発。友人のヘルベルト・フンクとともに商品化に成功し、ドイツで広く知られるようになる。

 

その後、ドクターマーチンはイギリスのビル・グリッグスへと渡り、同国でエア・クッション・ソールの製造特許を取得。医師、クラウス・マルテンスの名前を英語読みにした「ドクターマーチン」が誕生した。

履くほどに足に馴染む。おろしたてのマーチンは革が硬いので(昔のマーチンはみんな硬かったので)、厚手の靴下を履いて靴擦れを防ぐのが常だった。

番外編「ブリティッシュトラッドのクラークス」

ドクターマーチンがカウンターカルチャーを代表する一足ならば、同じイギリスで生まれた「Clarks(クラークス)」は、1825年から続くトラッドスタイルの代表格。

 

天然の生ゴムから作られている独特のクレープソールは、ドクターマーチンのエアークッションソールとは異なる履き心地を持つ。さながらやんちゃなドクターマーチンと、正統派なクラークスと言ったところ。

クラークスの名作、ワラビー。コンフォートシューズの礎を築いた一足。

番外編「ルーツはワークブーツ。ドクターマーチンとダナーの共通点」

ワークブーツとして生まれ、労働者階級でも購入しやすい金額という、ドクターマーチンと似た背景を持つ「Danner(ダナー)」。アメリカ、オレゴン州ポートランドで誕生したダナーは、1959年にビブラムソールを搭載。ハイキングブーツとして、人々が好んで履くようになった。

 

その後、1979年にゴアテックスファブリックを採用。現在のダナーの原型が生まれる。

ダナーライトのローカット(ラクロス・フットウエア製)。

ロンドンっ子がドクターマーチンを履けば、ポートランドの山男たちはダナーを履く。トラディショナルなクラークスも然り。現代でもそのスタイルは脈々と受け継がれている。



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