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数々のミュージシャン・俳優から愛されたレイバン不朽の名作たち

数々のミュージシャン・俳優から愛されたレイバン不朽の名作たち

■音楽やハリウッド、ポップカルチャーと親密な関係のレイバン サングラスの代名詞と言っても過言ではないRay-Ban(レイバン)。80年以上も世界中から愛されているサングラスブランドは、日本においても性別や世代を越えて人気の定番アイテムです。 そのアイテムの歴史や文化も含めてオシャレを楽しむメンズファッションにおいて、レイバンのサングラスは多くのミュージシャンやアーティスト、著名人が愛用していたり、映画の中で俳優が着用していたりと特別な魅力を持った唯一無二のブランド。なかでも名作と呼ばれている「ウェイファーラー 」「アビエーター 」「クラブマスター」の3モデルは影響力の強い人物や作品で登場するため、カルチャーにとってなくてはならない存在です。 これほどサングラスのモデル名が世間に浸透しているブランドは他にはなく、洗練されたデザインと時代に流されない存在感が世界中から愛され続けている理由の一つでしょう。 ■革新的な技術がレイバンの原点 10050588_07H その原点は、1923年に光学機器メーカーであるボシュロム社がアメリカ陸軍航空隊の要請によりパイロット用サングラスの開発を手掛けたことから。1926年にパイロット向けに開発した「レイバン・グリーン」と呼ばれるレンズが完成し、「アビエーター」モデルが合衆国陸軍航空隊に制式採用。1937年には一般販売を開始し、”光線(=Ray)を遮断する(=Ban)”という意味を込めてレイバンが誕生しました。 紫外線を100%カットする光学的な裏づけを持ったサングラスは、それまでの風よけや色付き眼鏡のようなゴーグルとしての役割しか持たないパイロット用アイウェアに比べ、革新的に進歩。創業当時はファッション面ではなく、ミルスペック基準の機能面で大きな評価を得てレイバンは確立されたのです。 それから、ミリタリーアイテムを取り入れるファッションの流行や金属からプラスチックによる大量生産、アメリカの音楽シーンがフォークからロックへと変遷していくという様々な流れの中で、レイバンというブランドは機能面を超越してファッションアイコンとしての地位を確立していきます。 ■世界で一番有名なサングラス「ウェイファーラー」 △RB2140F「WAYFARER (ウェイファーラー )」 レイバン初のプラスチックフレームとして1952年に誕生した「ウェイファーラー」はサングラスの歴史の中で最も有名な1本。ミュージシャンやアーティスト、ファッショニスタ、ハリウッド映画など著名人たちが多く愛用したモデルで、ポップカルチャーやファッションになくてはならない存在。 また、レイバンというブランドのファッション性を確固たるものとしたウェイファーラーは、現在でも時代を越えて圧倒的な人気を誇る名作中の名作です。 △多くの有名人が愛用するウェイファーラーにあって特に印象的なボブ・ディラン 。 ボブ・ディランをはじめマドンナ、映画『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーン、映画『ブルース・ブラザーズ』のジョン・べルーシなど多くの有名人が愛用。現在ではアジアンフィットモデルなど、目鼻立ちのはっきりとした西洋人以外でも着用がしやすいモデルも誕生。洗練されたデザインはそのままに、より多くの人が身につけやすく進化し続けるのもウェイファーラーが長く愛され続ける理由の一つです。 ■レイバンの原点であるパイロットモデルの「アビエーター」 △RB302558「Aviator(アビエーター )」  ふたつめは、レイバンを象徴するパイロットサングラスで最も歴史のある「アビエーター」。特徴的なティアドロップ (涙の雫)の型は飛行パイロットの目の動きをカバーできるように、最大の視野を確保するために考えられたデザイン。 ヘルメットをかぶったままでも着脱できる真っすぐなテンプルや、耐久性を高める効果のあるダブルブリッジなどミルスペックの機能美が魅力です。対象が自然な色合いに見えることから現在でも人気のグリーンのレンズは、レイバンが最初に開発した画期的なレンズで「レイバン・グリーン(Gー15)」と呼ばれるほど定着しています。 △映画『トップガン』でトム・クルーズが着用。 アビエーターを大流行させたのが1986年に上映された『トップガン』。劇中でトム・クルーズが着用したMA-1ジャケットと共に、街中で着用者が溢れかえるなど社会現象に。また、第一次世界大戦に続き第二次世界大戦でも重宝されていて、マッカーサーが着用した写真が残っているほどです。 2020年頃からクラシックなアイウェアが注目を集めており、ダブルブリッジのアイウェアがトレンドアイテムとして再燃。改めてアビエーターに注目が集まっています。 ■サーモント型の代表モデル「クラブマスター」 △RB3016F「CLUBMASTER(クラブマスター)」 最後に紹介するのが、1986年に誕生した金のメタルフレームとブロウ部分に配された厚みのあるアッパーリムが特徴的なサーモント型サングラスの「クラブマスター」。’50年代からインスパイアされたクラシカルでタイムレスなデザインは、カウンターカルチャーの知識人や、公民権運動のリーダーたちが当時かけていたものと同様のデザインを踏襲。カジュアルさがありながらも知性的な印象を与えてくれます。アメリカントラッドをスタイリングする上でも欠かせないアイテムです。 △1992年、映画『レザボア・ドッグス』にてティム・ロスが着用 タランティーノの脚本・監督デビュー作である『レザボア・ドッグス』は今でもカルト的な人気を誇る名作映画。その中でティム・ロスが着用しているのがクラブマスター。 また、サングラスだけでなく眼鏡としても映画で多く着用されている珍しいモデルで、『JFK』のケビン・コスナーや『マルコムX』のデンゼル・ワシントンなど、知性と力強さを兼ね備えた役柄の人物が身につけているのも印象的です。 世界最高級のサングラスと称されるレイバン。アラフォーより上の世代だけでなく、最近は若い世代の人達にも変わらずに支持を得ています。 映画の中の主人公やミュージシャンのジャケットを見ては、何を身につけているか必死に探していた時代。その労力分の愛着が湧いてしまうためなのか、当時から名作と呼ばれるモノ達は今も熱を持って愛されているモデルが多くあります。特にレイバンのサングラスは強く影響を与える人物が愛用しているためその名作度合いも高く、また、時代を牽引する人達の多くが魅了されていたことも興味深い話です。 歴史や映画や音楽などの昔の文化が残っていく間、変わらずに機能性を超越した憧れのサングラスとして新しい世代も魅了していくのかもしれません。 *イラスト:Koido Kana 宇田川雄一

「革財布を通じて知るMade in Japanの魅力」

「革財布を通じて知るMade in Japanの魅力」

緻密で正確な作りの良さで世界中から認められるメイド・イン・ジャパン。ハイブランドも日本の工場に依頼していることが多く、さまざまnなジャンルで高く評価されています。 では実際、日本製の商品にはどのような魅力があるのでしょうか? 今回はレディオアオーダーの職人兼代表である井戸崇史氏に、財布という革小物を介してメイド・イン・ジャパンの魅力をうかがったところ、日本の職人を鍛えているのは“お客様との関係性”というお話を聞くことができました。 ■プロフィール 井戸崇史氏。2005年3月、東京東十条の小さな革工房で誕生した「READY OR ORDER(レディオアオーダー)」。ブランド名はREADY(既製品)でもORDER(オーダーメイド)でも、という思いから。使い勝手の良さと職人の作る確かな品質が魅力のブランドで、お客様と対面でオーダーをうけることもあるため、消費者の気持ちを汲み取りやいのもこのブランドの魅力。 ■レディオアオーダーの魅力 「YO-ASOBI」レディオアオーダーで初めて使わせてもらった財布 今でこそ「コンパクトウォレット」というカテゴリーができるくらい人気になったミニ財布。それを10年以上前から作っていたのがレディオアオーダーであり、そのモデル名が「YO-ASOBI」です。 クラブで遊ぶ時に必要最低限のものが収納できて、お尻のポケットに入れても平気。その上、財布を出す時に大人が恥ずかしくないクオリティ。さらに、小さくても通常の財布と変わらない使いやすさ。というコンセプトで開発されたミニ財布で、この先見の明と使いやすさというユーザーファーストな物づくりがレディオアオーダーの魅力です。 ■日本人ユーザーの審美眼はダントツ 近年では中国をはじめとするアジアの国々も生産力が向上。ハイブランドの商品もそれらの国々で生産されており、日本がずば抜けて高品質の商品を作るというイメージではなくなってきたそうです。 とすれば日本製の魅力とは何か、と尋ねてみると 「お客様の好みの違いは大きいかなと思います。日本人はものすごく目が肥えていて、綺麗で上品な品質のものを好む傾向があります。そのため、商品を取り扱う百貨店や小売店もエンドユーザーの期待に応ようと、自然と審査が厳しくなります。そこで実直に答えようとする日本人の性質も相まって、日本の職人さんは今でも鍛えられているのだと思います」と回答。 どちらかというと、それぞれのこだわりを追求する職人像を持っていた身としては、日本製品のどこか美しく品のある精密な作りが、お客様との関係性で鍛えられているという点には驚きでした。ユーザーファーストな職人さんや工場、ブランドだからこそ信頼され生き残って行けるのかもしれません。 ■最初に見るのは「ステッチワーク」 △ミシン縫い。丁寧で温かみのあるモノ作りは日本製の魅力。 多くの日本人の審美眼が肥えている点は理解できたのですが、最近ではネット販売なども増え、実物を見ずに判断することが増えてきました。なんとなく感じる美しさという漠然とした感覚ではなく、具体的に判断できる審美眼が備わっているかは不安なところです。そこで、同業者としてまずどのディテールを見るかをお伺いしました。 「最初に見るのはやっぱりステッチワーク。いわゆる縫製です。縫製が曲がってないかはもちろんのこと、ミシンの目が均一かどうかまで見てしまいます」 縫製というのはパッと見でわかりやすい箇所。この部分をこだわれないということは、その製品に対する想いやこだわりも推して知ることができるとのこと。 △一つ一つ職人さんの手により裁断。機械と手作業を使い分けることで丁寧さと効率を両立 また、何も入っていない状態でポケットが浮いてしまったり、縫製によって変なシワができていたり、閉じた時に本体とフタがずれていたりというのも論外だそう。こういった細かいディテールにまでこだわることで、綺麗で美しい「日本らしい」と言われる商品が生まれるのだと改めて実感しました。 ■一番のこだわりは、「持ち勝手の良さ」と「使い勝手の良さ」 △L字型のミニウォレット 「POKKE」。手のひらサイズながらも収納力と使いやすさに優れる 「お財布は大切なお金の保管場所です。大切なモノを作らせていただいている以上、持っている人の気分が上がるモノを作りたいと思っています。そして、何よりもこだわっているのが、手に持った時のしっくりくる感じの『持ち勝手の良さ』と、小銭が見やすいかお札は出し入れしやすいかなどの『使い勝手の良さ』です。 こうした使いやすさがメンタルに大きく左右すると考えています。使い勝手などは人それぞれな部分はあるので万人が納得する正解はないのですが、実際にリピートしてくれる人がいた時に間違ってなかったんだなと思えます。」と井戸氏。 出来るだけ多くの人が不満なく使えるように、試作段階では実際に使っては作り直してと修正を繰り返すそうです。 △「YO-ASOBI」の小銭スペース大きく開いてミニ財布とは思えない見やすさ。 冒頭で「YO-ASOBI」という財布について触れましたが、この財布を最初に使ってみた時の感想が「優しい!」でした。コンパクトな財布なのに、普通の財布よりも小銭スペースが大きく開くため驚くほど使いやすかったのです。 当時、インポートブランドの財布が流行していたこともあり、その使いやすさにはカルチャーショックを受けました。レディオアオーダーの財布には、ユーザーファーストな使い勝手の良さが随所にみられます。日本という文化の中で試行錯誤された使いやすさも「メイド・イン・ジャパン」の魅力の一つでしょう。 お店で販売をしているときに井戸氏はある体験をしました。経年変化を伝えるサンプルとして自分が使いこんだものをディスプレイしていた時に、ヨーロッパのお客さんが来てその経年変化サンプルを指して「これが欲しい!」と。 そこで、これは中古だよ?新品がこっちにあるよ?と提案しても「これが良いんだ!」と言って買って行ってしまったそうです。ちなみに、日本人のお客様からそう言われた経験はまだないと語ってくれました。 大雑把な部分や色ムラなどを味と捉えるヨーロッパの人に対して、日本人は綺麗なモノを求める傾向にあるのが伝わるエピソードです。もしかしたら、日本人は自分で「育てること」を好むのかもしれません。ユーザーファーストな職人さんの思いが世界から認められる丁寧なモノ作りに繋がるのでしょう。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

■歩きやすさも変わるビジネスで失敗しない「フォーマルな靴紐の通し方」

■歩きやすさも変わるビジネスで失敗しない「フォーマルな靴紐の通し方」

■革靴ではずさない「シングル」「パラレル」 普段なんとなく通している靴紐ですが、実は通し方にもフォーマルな通し方とカジュアルな通し方が存在します。何も知らずビジネスシーンでスニーカーのように靴紐を通したりしていませんか? 靴紐の通し方は与える印象だけでなく、フィット感や履き心地にも大きく影響します。 今回は革靴を履く時に間違いのないフォーマルな通し方「シングル」「パラレル」という2つの定番の通し方を紹介します。 ■オーソドックスで上品な印象の「シングル」 最もすっきりした見た目になる「シングル」は一番トラッドで簡単な結び方。フォーマルやビジネスシーンとの相性が良いのでまずは覚えておきたい結び方です。ただ、シンプルな結び方なだけに、緩みやすいという特徴も。外回りで長距離を歩く人というよりは、デスクワークや脱ぎ履きが多い人などにおすすめな結び方です。 <ステップ①> 手前(つま先)に向かって右(外側)から順に、それぞれのアイレットに番号を振っておきます。 まずは手前の①、②に表側から靴紐を通します。この時左側に通した靴紐を長めに取っておくと、最後に紐の長さを調整しやすいです。 <ステップ②> ①に通した靴紐を足首に近い⑩に裏側から通し、⑩に通した靴紐はこのままおいておく。 <ステップ③> 最初に②に通した靴紐を③に裏側から通します。 <ステップ④> ②に通した靴紐を④に表側から通します。 <ステップ⑤> <ステップ3>と同じ様に④に通した靴紐を⑤の裏側から通します。そのまま同様の手順で⑦と⑧にも靴紐を通します。 <ステップ⑥> ⑧に通した靴紐を⑨に裏側から通します。 <ステップ⑦> 靴紐の長さを調整して結べば完成。内羽根の革靴やストレートチップなどドレッシーなシューズと相性抜群です。 ■シングルよりも優れたフィット感「パラレル」 シングル同様にフォーマルな見た目ながらも、若干のスポーティさがあり、伸縮性のある通し方です。革靴はもちろんスニーカーを上品に見せたい時にも好まれる通し方で、左右の長さが調整しやすく緩みにくいのも特徴。また、フィット感が高い分、疲れにくいため革靴で歩き回る様な人におすすめです。 <ステップ①> シングル同様に①、②に表側から靴紐を通します。この時、左右の紐の長さを同じにとるのがポイント。その後、②に通した靴紐を③に裏側から通します。 <ステップ②> ③に通した靴紐をそのまま④に表側から通します。 <ステップ③> ④に通した靴紐は一旦保留します。最初に①に通した靴紐を⑥に裏側から通します。 <ステップ④> ⑤に通した靴紐をそのまま⑤に表側から通します。 <ステップ⑤> ⑤に通した靴紐は一旦保留します。先ほど④に通した靴紐をステップ⑵と同様に⑦に裏側から通した後、⑧に表側から通します。 <ステップ⑥> ⑧に通した靴紐をそのまま⑨に裏側から、先ほど⑤に通したく靴紐を⑩に裏側から通したら完成。長さは最初に揃えておけば最後は微調整で済みます。 ↑ジャラン スリウァヤのシューズ/3万6000円+税(バーニッシュ) 靴紐の通し方は一見同じ様な見た目でも、種類によって履き心地に変化を与えます。この他にもスニーカーで定番のカジュアルな通し方や、甲がキツく感じる時の通し方など靴紐の通し方だけでも多岐にわたります。購入したものの足に合わずタンスの肥しになっている革靴があれば、一度、靴紐の通し方を見直してみるのもおすすめです。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

「10年先も身に着けられるクラシカルな眼鏡」

「10年先も身に着けられるクラシカルな眼鏡」

■道具としての眼鏡からファッショアイテムとしての眼鏡へ ファッションアイテムとして市民権を得た眼鏡。   化粧をしない男性にとって顔にかける装飾品の眼鏡は、時計や靴なのどのファッション小物以上にその人の印象に大きく影響します。また知的さや誠実さだけでなくオシャレな印象も与えるため、自分のキャラクターをプロデュースする上でも注目を集めています。   2000年代の頃から眼鏡だけを特集した雑誌が刊行されたり、インターネットではジョニーデップなど海外のスターがかけている眼鏡がどのブランドなのかを知れたりと、この頃から一般的にも眼鏡はファッションアイテムとして広く浸透。視力の悪さから装着していた“道具”としての眼鏡から、“ファッション”を楽しむための眼鏡に変わってきました。 ■トレンドに左右されないクラシックデザインの眼鏡3型 昔に比べて“面長の顔型にはこの型”というような、セオリーに縛られない自由さも最近の特徴。顔の形に似合うものを選ぶのも大事ですが、眼鏡にもトレンドがあり、流行や着る服に合わせてコーディネートする重要度が増しました。   そこで大人の男性が選ぶならクラシックなデザインの眼鏡がよいでしょう。60年代までにアメリカで生まれた定番モデルは、アメリカファッションの影響を強く受ける日本のメンズファッションと相性がよく人気。中でも、「ウエリントン」「ボストン」「ラウンド」は今後もトレンドに左右されない定番の型としておすすめです。 ■存在感のあるベーシックなスタイル「ウエリントン」 △<左>アヤメの眼鏡/3万6300円、<右>OG×オリバーゴールドスミスの眼鏡/4万4600円(共にコンティニュエ) 「ウエリントン」は、玉型が台形でブロー部分の上辺に比べて下辺が短くなっているのが特徴。1950年代のアメリカでは、ウエリントン型のメガネがアイビーリーグで流行し、ウッディアレンやスーパーマンに変身する前のクラーク・ケントがかけている眼鏡としてもおなじみ。しっかりとした存在感のあるデザインのものが多く、雰囲気をガラッと変えやすい魅力があります。また日本人が合わせやすい型とも言われていて、最初のファッション眼鏡としておすすめの1本です。 △耳にかけるパーツの名称は「テンプル」と呼ばれる 左のようにテンプルが太めのものが定番のクラシカルなタイプ。それに比べて右のものはテンプルが細いメタル仕様ですっきりとしたモダンな印象に。色やディテールのデザインが違うだけで大きく印象が変わるのも眼鏡の特徴です。 ■オシャレ眼鏡の本命「ボストン」 △<上>ミスター・ライトの眼鏡/6万4900円、<下>ジュリアスタートオプティカルの眼鏡/4万700円(共にコンティニュエ) ボストンは丸眼鏡の一つで、逆三角形型とも言われる下部が丸みを帯びて細くシェイプされているデザインが特徴。また、左右のリムを繋ぐブリッジの下に鍵穴のようなデザインが施されているのも特徴で、“キーホールブリッジ”と呼ばれています。   四角型のウエリントンと比べて丸型なため、柔らかくすっきりとした印象も与えられるので女性からも人気でウエリントンと並ぶクラシックな眼鏡。ジョニーデップがかけている型としても有名です。 △クリアフレームは涼しくすっきりとした印象で人気。クリアフレームと言えばアンディーウォーホールを思い出すなどアーティスティックな印象も。 眼鏡ブランドであるタート・オプティカルの名作“P3”というモデルを復刻させた“純ボストン”と呼ばれるモデル。アメリカではボストン眼鏡のことを“P3”と呼ぶこともある程。細めのフレームよりも太めのフレームの方がよりクラシックな印象を与えます。 ■落ち着いた大人の雰囲気が人気の「ラウンド」 △<上>アヤメ・シー・トーキョの眼鏡/3万6300円、<下>10アイヴァンの眼鏡/7万400円(コンティニュエ) クラシカルで知的な印象を与える丸眼鏡。中でもおすすめは綺麗な丸の形をしたラウンド型。ですセルフレームも人気ですが存在感が強すぎるため、すっきりとした印象のメタルフレームがイチオシ。   プラスチックが大量生産されるまでは金属製の眼鏡が主流で、その後、生産のしやすさからセルフレームのものが増えています。最近ではクラシック回帰のデザインが注目を集めていることもありメタルフレーム人気が復活。中でも、ラウンドのメタルフレームはより落ち着いた大人の印象を与えることから安定した人気を誇っています。   メタルフレームではないですが、故スティーブ・ジョブズがラウンド型の眼鏡を愛用していました。 △ブリッジとノーズパッドに一体に。馴染みやすさを追求 メタルフレームにも安価な物から高価なものまであり、セルフレームよりも価格の差がはっきり出ます。素材の良し悪しだけでなく、ディテールのこだわりがはっきりと伝わるのは、メタルフレームならでは。リムの部分に模様をデザインしているものや、ブリッジとノーズパッドを一体にすることでかけ心地にこだわる機能美など、シンプルだからこそ伝わるクラフトマンシップは一度手に取ったら虜になる魅力があります。 ■型にはまらないデザイン △ユウイチトヤマの眼鏡/3万7400円(コンティニュエ) 最近ではカテゴライズが難しいデザインが多く出ています。例えば、このユウイチトヤマの眼鏡はウエリントン型にボストン型の特徴でもある“キーホルブリッジ”をデザインしたウエリントンとボストンを融合したようなモデル。最近の眼鏡業界は、新しいブランドや新しいデザイナーも多くまさに群雄割拠の時代。そのため、多くのデザインが誕生。型から入って最終的には長く掛けられる自分自身にぴったりの1本を見つけやすい、眼鏡好きには有り難い時代です。   “伊達眼鏡”という言葉もあるように、昔から眼鏡はファッションアイテムとして身につけている人も少なくなかったでしょう。ただ、最近では情報を入手しやすかったり、知的で清潔感のある男性が好まれる時代性だったりと今まで以上にファッションアイテムとして定着した印象があります。また、オシャレができる上に、花粉やほこり、ウイルスから簡易に保護できる機能性も注目されています。ON/OFFの切り替えや印象を自己プロデュースするアイテムとしても眼鏡はおすすめです。

「カーフ」「キップ」「ステアハイド」今さら聞けない牛革の種類

「カーフ」「キップ」「ステアハイド」今さら聞けない牛革の種類

レザーの中でも最も多く使われている牛革は、加工のしやすさや耐久性が高いだけでなく、「食肉の副産物」として手に入る世界中でもっとも多く流通されている革です。ただ、牛革にはいろいろな呼ばれ方があるのは知っていましたか? 中でも「カーフ」という言葉は有名で一度は聞いたことがあるかもしれません。ただ、他にもさまざまな牛革を指す言葉があります。実は牛は生育年齢や性別によって名称が細かく細分化されています。今回は中でも代表的な「カーフ」「キップ」「ステアハイド」という3つの牛革の種類につい紹介していきます。 ■上品な表情が特徴の高級品「カーフ」 生後6カ月までの仔牛の原皮を使った希少価値の高い最高ランクの革。生まれたてなこともあり傷が少なく、薄くて軽い上に繊維構造がきめ細やかなため銀面(革の表面)の手触りが最上級。上質な質感のため高級靴のアッパーや鞄、革小物などラグジュアリーな革製品に使用されることが多いです。 ちなみに、生後3カ月までの革を「ベビーカーフ」と呼び、「カーフ」よりもきめ細やかでさらに上級の革として分類することがあります。 △タンニンなめしと染料のみで仕上げているこの革はイタリア トスカーナ地方に100年以上続くタンナー”コンチェリア・グイディ&ロゼリーニ社”製のカーフ。 △牛革の風合いを活かす製法ながらツルッとした手触りと少しムラのある銀面が特徴。ガンゾの長財布/5万5000円(ガンゾ 本店) ■バランスの取れた高級レザー「キップ」 次は生後6カ月〜2年までの牛の原皮を使った革が「キップ」です。カーフに比べて繊維の密度が高く少し厚手で丈夫なバランスのいい革になります。また、加工法にもよりますが、使っていくうちに艶が増していくため経年変化を楽しめるのも特徴。シボ感を生かした高級革として革製品に使用され、しなやかで手の馴染みがいいため、カーフに比べて中性的な雰囲気も魅力。ちなみに、海外では「キップ」も「カーフ」と分類されることがあります。 △植物の樹皮や葉などから抽出された渋を利用してなめされた、キップスキンのベジタブルタンニングレザー。 △銀面のシボは使い込むほどにあたりがつきテカリも出てくる経年変化を楽しめる革。 ■無骨で耐久性に優れた「ステアハイド」 食用のため生後3〜6カ月以内に去勢し、2年以上育ったオス牛の原皮を使った革が「ステアハイド」。去勢することで性格が穏やかになり牛同士が喧嘩をしなくなるため、傷が少なく程よく肉が引き締まり、安定して流通される代表的な牛革です。 「カーフ」や「キップ」に比べてキメの細かさや柔らかさは劣りますが、その分、銀面は丈夫で耐久性も優れています。野球のグローブやライダースなどで使われるなど、使い込むほどに馴染み“味”が出てくることが魅力の革です。 △国産のステアハイドのヌメ革を製品化し後染め。ヴィンテージ感が出てようやく程よい硬さになるくらい丈夫な革 △無骨な革の質感はクラシックなヴィンテージな雰囲気を持つ真鍮との相性がいい。クランプのベルト<上>1万2100円、<中>1万2100円、<下>1万1000円(池之端銀革店) ■番外編:経年変化を楽しめる最高級レザー「ブッテーロ」 年齢によって名称や特徴が変わってきますが、革は部位によっても特徴は大きく変化します。中でも「ブッテーロ」と呼ばれる革は、ステアハイドのショルダー部分のみを加工している、希少性の高い最高級の革と言われています。 イタリアのトスカーナ州・フィレンツェにある老舗タンナーのワルピエ社で、伝統的な技法により時間を惜しむことなく作られ、さらに、一頭の牛から取れるショルダーの部分は限られているためとても希少性の高い革となります。ハリとコシがありながらツルっとした銀面はエレガントな表情が特徴になります。 △イタリアのトスカーナはタンナー数が世界一の革の名産地。経年変化を楽しみやすいヌメ革の「ブッテーロ」 △丈夫なヌメ革は使っていくうちに光沢を持ち飴色に経年変化。レディオアオーダーの長財布/4万1800円(レディ オア オーダー) ■まとめ およそ200万年前の旧石器時代から使われていたと言われる皮革の歴史ですが、靴、カバン、財布、名刺入れ、手袋など現代のファッションにおいても革製品は欠かせないアイテムになっています。 牛革だけでも「カーフ」「キップ」「ステアハイド 」と細分化されているところに革の奥深さを感じます。ファッションもネットで買い物する時代。文字だけで判断することが増える中、一番メジャーな牛革を知ることは、ファッションを楽しむ上で欠かせない知識になってくるでしょう。

海軍発祥の機能美と歴史が魅力な「Pコート」の基礎知識

海軍発祥の機能美と歴史が魅力な「Pコート」の基礎知識

■ピーコートの「ピー」って何?定番すぎて知らなかったピーコートの歴史 スーツとの相性もよくカジュアルに合わせても上品な印象を与えてくれることから人気の定番アイテム「ピーコート」。 元々は19世紀末から英国海軍が艦上用の軍服として着用していた防寒服が由来で、フランス・ブルターニュ地方の漁師たちも愛用していたと言われています。 そのため変化が激しく厳しい海上の気候条件においても、海軍の兵士や漁師が効率的に活動するための機能性が重視されたコートです。 「ピーコート」の「ピー」という言葉の由来は諸説あり、オランダ語の「pij jekker(ピーヤッケル)」という厚手のウールコートという言葉の「piji」の頭文字からとったという説と、「錨(いかり)の爪」を意味する「Pea」の頭文字からとったという説があります。 ■Pコートを定義する5つのディテール フィデリティのPコート/3万2780円(アイメックス) タイトシルエットと上品なデザインからオン/オフで使えるの大人のショートコートとして人気のピーコートですが、ダブルブレストでショート丈ならピーコートかというとそういう訳ではありません。意外と知られていない5つの特徴的なディテールからピーコートは成り立っています。 ポイント①「ラペル」 ピーコートの一番の特徴である大きなラペル。正式名称はありませんが、形状が近いことから一般的に「リーファーカラー」と呼ばれています。風や波音・船の騒音などで声が聞き取りづらい甲板上で、襟を立てて集音効果を高めることを目的として大きく設計。機能性を重視したデザインは結果的にエレガントで上品な印象を与える要素になっています。 ラペルの下襟はボタンで留めることが可能。上まで留めることで防寒性と防風性を高めてくれます。 集音効果を高めるために大きく作られた上襟。チンストラップもついていることから防寒目的でも使われていたことがわかります。 ポイント②「ダブルブレスト」 海上において避けて通れないのが激しい風。そのため、ピーコートは防風性を高めるたにダブルブレストを採用。また、ダブルブレストにすることで左右どちらの身ごろが上前でもボタンが締められる設計になっており、あらゆる方向から風が吹く船上の環境下でも防風の役目を果たします。 最近ではシングルブレストのピーコートも見かけたりしますが、本格的なピーコートを求めているならダブルブレストは外せないポイント。フロントボタンの数は8〜10個が定番です。 ポイント③「メルトン素材」 ピーコートの定番は厚みがあって柔らかい手触りと高い保温性が特徴のメルトン素材。ウールを縮絨することで隙間をなくして作られた高密度で重厚感のあるウール生地のことで、ウールながら防風性が高く保温力もあるため、冬コートの素材として人気です。 タフで長持ちする反面、隙間なく作られている素材はコート自体が重たくなるというデメリットもあります。ちなみに、ピーコートの定番色はネイビーですがこれは海の色の保護色として採用されているためです。 ポイント④「マフポケット」 垂直に切り口が入ったデザインが特徴の「マフポケット」は「ハンド・ウォーマー・ポケット」とも呼ばれ、寒い甲板の上で手を温めるために作られたディテールです。両側から腹部のあたりに手を入れられるようになっているため、ちょっと高めの位置に設計されているのもポイント。マフとは毛皮でできた円筒形の防寒具のことで形が似ていることから「マフポケット」と呼ばれています。 ポイント⑤「ボタン」 海軍の象徴である錨(いかり)のデザインがあしらわれたボタンもピーコートの特徴の一つ。初期は木製のものが多く使われていましたが、最近ではプラスチックのものが主流に。写真のこのボタンはアメリカ製ピーコートの定番ブランドであるフィデリティのもの。 1930年代の米軍大戦モデルをモチーフに、アメリカ建国時の13州からくる13スターが刻印された錨ボタンです。イギリス製の場合は錨の周りに星のデザインはなく、国やブランドによる錨ボタンのデザインの違いを楽しめるのもピーコートならではの魅力です。 タイトフィットでスタイルがよく見えることから冬のショートコートとして人気のピーコートですが、その上品なデザインは海軍の過酷な環境をより快適に過ごすために考えられた機能美によるもの。歴史を知ることでそのアイテムにもっと愛着が湧いてくるのもメンズウェアならではの魅力であり醍醐味です。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

日本のメンズファッションにおいて「アメトラ(アメリカン・トラディショナル)」は王道スタイルです。ただ“アメトラ”と聞くとどんな服装を想像しますか? VANの打ち出した「アイビールック」のようなファッション? ラルフローレンが提案した「ブリティッシュ・アメリカン」? もしくは80年代のプレッピーや渋カジの「キレカジ 」? または2000年代にトムブラウンが発表していた50年代後半〜60年代後半の「トラディショナル・アメリカ」を彷彿とさせるスタイルを連想する人もいますよね。 答えはどれも“アメトラ”です。正確にはそれぞれ違うスタイルですが、どれも同じ1ジャンルと考えるといいでしょう。 日本における「アメトラ」の礎は、VAN創始者の石津謙介氏によって「アイビールック」として定着。そのためVANのアイコン的な“紺ブレ(紺のブレザー)”は、一着は持っておきたいモノで、大事なのは、それを知った上で自分らしく着るということだと思います。 ■アイビーな“紺ブレ”とは ブレザーはもともと競技用のジャケットでした。そのためジャケットに比べると程よいぬけ感があり、それが今の時代とマッチしています。また定番中の定番アイテムなので、流行に左右されにくい上に、ビジネスのジャケパンスタイルにも、着崩してカジュアルスタイルにも合わせられる着回しが効く汎用性も魅力です。 段返り三つボタンで金のメタルボタン、ナチュラルショルダー、ボックスシルエット、センターベントというのが、いわゆるアイビーの “紺ブレ”のど真ん中ですが、時代と共に少しずつディテールは変わっていきます。 ↑二つボタンの金のメタルボタンでサイドベンツ。「ラルフローレンらしいニュー・イングランドスタイルな“紺ブレ”。ラルフローレンのブレザー/税抜8万2500円(セプティス) 紺ブレにはダブルとシングルとありますが、最初はシングルをおすすめします。西洋人に対して小柄な日本人は、ダブルだとちょっと窮屈な印象になるほか、シングルの方がエレガントになりすぎず着回しがしやすいからです。 ■ネクタイの柄にも存在する「アメトラ」「ブリトラ」の区別 ネクタイにも「アメトラ」らしいスタイルはあります。代表的なのはブルックスブラザーズの“右下がりのレップタイ”です。 △左下がりの縞模様が「ブリトラ(ブリティッシュ・トラディショナル)」。右下がりの縞模様が「アメトラ」。アイクベーハーのシャツ/共に1万7280円、<右>ベントレークラバッツのネクタイ/1万1880円(セプティス)、<左>ネクタイ/スタイリスト私物 レップタイとは、光沢のある畝織りの生地で作られたネクタイのことで、代表的な柄としてレジメンタルストライプの縞柄があります。英国の定番であるこのレジメンタルストライプにブルックスブラザーズは注目し、同じように作るのではなくそこに工夫を加えました。もともとは左下がりだった縞模様を反転して右下がりの縞模様にすることでアメリカ流にアレンジしたのです。このようにストライプのネクタイをしめる際には、柄の下がる方向にも注目してみると、よりアメトラファッションを楽しめるでしょう。 ■シャツの定番はオックス地の白いボタンダウンシャツ またアメトラの定番シャツといえば白のボタンダウンシャツ。そしてこのボタンダウンシャツを作ったのもブルックスブラザーズです。創業者の孫、ジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦しているときに、選手のユニフォームの襟が風であおられてプレーの邪魔にならないようにと襟先が留められていたのに注目。その発想をシャツに応用することでボタンダウンシャツが誕生しました。この逸話からポロカラーシャツと呼ばれています。 △全てボタンダウンシャツ。色や柄はなんでもOK。オックスフォード地でボタンダウンであることが何より大事。<左>アイクベーハーのシャツ/1万7280円、<下>サックス/1万7280円、<右>ストライプ/1万7280円、<上>キートンケースのチェックシャツ/1万9980円(セプティス) ボタンダウンは“白オックス”がベストです。オックスフォード地は地厚であるため、今のようにノンアイロンのシャツなどがない時代は洗いざらしでも、形崩れすることなくシワが目立ちにくい上に、襟元のボタンを留めるだけで品よくなるため、簡単でオシャレという理由から人気のシャツになったそうです。 由来が競技用のシャツということもあり、カジュアルとして位置付けられますが、ジャケパンスタイルなどビジネスとカジュアルの境目があやふやな現代では、少しラフ感のあるボタンダウンシャツは人気アイテムです。 ■今らしい紺ブレの着こなし “紺ブレ、ストライプシャツ、白のボタンダウンシャツ”とアメトラのポイントを抑えてきましたが、これをスタイリングしてしまうと、学生っぽいファッションになったり、ともすればコスプレ感が出たりしてしまうので注意が必要です。 そこで“紺ブレ”を軸にしてネクタイやシャツを違う色や柄に変えることでスタイルがグッと今っぽくなります。以下のスタイリングを参考にしてみてください。 共通して使ったのは「紺ブレ」「ローファー」「腕時計」「メガネ」の4点ですが、それぞれ印象が変わってきます。ただ、“アメトラ”というテーマが共通しているのがおわかりでしょうか。着回しをしてもアメトラスタイルに当てはまる、これが「紺ブレ」の魅力で、1着は持っておいた方がいいと言われている理由です。 △カルレイモンの時計/36,300円、 基本的にファッションは自由です。しかし、日本の「アイビールック」にはルールが存在します。 当のアイビーリーグの大学生達は当たり前に自然体で過ごしていただけなのですが、その自然体のカッコよさに石津謙介氏は衝撃を受けたそうです。そんな憧れのファッションを日本に持ち込みたいと考えるようになった結果、アイビーリーガー達を観察し一定のルールを作りました。そして時を経て、アメリカは日本人が作る「アメトラ」を逆輸入することになるのです。 このように、アメトラを通してファッションの歴史の流れを学べるのが“紺ブレ”の楽しさでもあるのです。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

冬コートの定番「トレンチコート」を知るための5つのディテール

冬コートの定番「トレンチコート」を知るための5つのディテール

■トレンチコートとは 定番コートの一つである「トレンチコート」。元々は第一次世界大戦時のイギリス軍が開発した寒冷地用防寒コートで、「トレンチ」とうい言葉は「塹壕」という意味があります。名前からも第一次世界大戦の「塹壕戦」を乗り切るために作られたコートであることが理解できます。 また、トレンチコートと言えばBurberry(バーバーリー)と(Aquascutum)アクアスキュータムが有名で、実用性を備えた機能とスタイリッシュなルックスはファッションアイテムとしても定番化。ビジネスはもちろんカジュアルにも合わせやすく時代に流されない定番コートです。 「塹壕戦」を乗り切るための防水アウターとして作られた背景だけに、他のミリタリーコートよりも細かいディテールが多いのも特徴。最近では忠実に再現するブランドは少なく、ディテールもミニマル化されてきていますが、その中でも押さえておきたいディテールを紹介していきましょう。 ディテール①「エポーレット」 エポーレットとは、「肩章(けんしょう)」また「肩飾り」の意味で、肩のところに付くバンド状の布のことをいいます。元々は軍服に銃や双眼鏡などの装備品を固定したり、階級を示すバッジをつけるものと付けられたと言われています。 ディテール②「ガンフラップ」 ライフルを撃つ際に銃床を当てて衝撃を和らげるための工夫として誕生したディテール。また、襟のボタンを全て留めた状態の時に上から被せれば、肩からの雨垂れの進入を防ぐことが可能に。そのことから「ストーム・フラップ」とも呼ばれています。 ディテール③「アンブレラヨーク」 トレンチコートにある、肩から背中にかけてフラップのような部分のことを言い、二重構造になっていて通気性の確保と雨の侵入を防ぐことを目的として作られました。これは「ストーム・シールド」と呼ばれることもあります。ちなみに“ヨーク”とは、衣服の切替部分のことで、そこに当てた布を表しています。 ディテール④「ダブルブレスト」 ダブルブレストとは、前身頃の幅が広く重なっていて、ボタンが2列に並んだコートのこと。もともとは両前にできるのを目的として作られたディテールです。また、「breasted(ブレステッド)」は英語で「胸」を意味します。 ディテール⑤「スリーブストラップ」 風雨が強いときに袖口を締めてこれを防ぐとともに、腕の動きで袖がまくり上がらないように取り付けられたバックルを装着した袖ベルト。「アームベルト」とも呼ばれることもあり、最近ではボタン式タイプのものも多くなっています。 自分なりの着こなし方を身につければ楽しさが広がる ビジネスコートの定番の多くはミリタリーコートが起源。それはスーツ自体の起源も軍服が派生してできたものだから相性がいいのも頷けるでしょう。また、カジュアルに着こなしたい場合にダブルブレストのものはちょっと格式が高く見えてしまいがちですが、パーカーやスニーカーなどコート以外はラフなアイテムを選べば日常でも着用しやすくなります。そのアイテムの歴史やディテールを知り、それぞれの役割や価値を実感すれば男性のファッションはより楽しくなりますよ。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

「ドクターマーチン、UKカウンターカルチャーのシンボリックな存在」

「ドクターマーチン、UKカウンターカルチャーのシンボリックな存在」

ファッションのみならず、カルチャーアイコンとしても有名な「Dr.Martens(以下ドクターマーチン。足の指を保護する硬いスチールトゥに、柔軟性と耐久性を併せ持つソールが特徴のこのワークブーツは、いつしかロンドンの若者たちが好んで履くようになった。 セックス・ピストルズ、ザ・フー、クラッシュなど、名だたるブリティッシュバンドが“労働者の象徴”たるドクターマーチンを履いて演奏し、キッズたちはプレイヤーに憧れてドクターマーチンを履くようになる。 油やガソリンなどでも滑らない。それでいて軽くて歩きやすいブーツとして人気を博した。ソールには「MADE IN ENGLAND」の文字が。 その後、シャツやポロシャツにサスペンダーを組み合わせ、頭を丸刈りにしたスキンヘッズたちが台頭。ドクターマーチンは狂信的なカウンターカルチャーの象徴としても扱われるようになった。 シューレースを足首に何十も巻いて履くスタイルが流行(「SKINS & PUNKS」Gavin Watson/Independent Music Pressより) 左右で異なるシューレースも(「SKINS」Gavin Watson/John Blake Publishingより) 当時の様子は映画「THIS IS ENGLAND(2016/インディペンデント映画)」でも描かれている。 ドクターマーチンはドイツ生まれ。ゴムタイヤを改造したエアークッションソール イギリスの音楽シーン、ロンドンのユースカルチャーとしてあまりにも有名なドクターマーチンだが、元々は1945年にドイツ人の医師、クラウス・マルテンスが開発したものだった。   クラウス・マルテンスは「スキーで怪我をした足に優しい靴を」という個人的な理由でエア・クッション・ソールを開発。友人のヘルベルト・フンクとともに商品化に成功し、ドイツで広く知られるようになる。   その後、ドクターマーチンはイギリスのビル・グリッグスへと渡り、同国でエア・クッション・ソールの製造特許を取得。医師、クラウス・マルテンスの名前を英語読みにした「ドクターマーチン」が誕生した。 履くほどに足に馴染む。おろしたてのマーチンは革が硬いので(昔のマーチンはみんな硬かったので)、厚手の靴下を履いて靴擦れを防ぐのが常だった。 番外編「ブリティッシュトラッドのクラークス」 ドクターマーチンがカウンターカルチャーを代表する一足ならば、同じイギリスで生まれた「Clarks(クラークス)」は、1825年から続くトラッドスタイルの代表格。   天然の生ゴムから作られている独特のクレープソールは、ドクターマーチンのエアークッションソールとは異なる履き心地を持つ。さながらやんちゃなドクターマーチンと、正統派なクラークスと言ったところ。 クラークスの名作、ワラビー。コンフォートシューズの礎を築いた一足。 番外編「ルーツはワークブーツ。ドクターマーチンとダナーの共通点」 ワークブーツとして生まれ、労働者階級でも購入しやすい金額という、ドクターマーチンと似た背景を持つ「Danner(ダナー)」。アメリカ、オレゴン州ポートランドで誕生したダナーは、1959年にビブラムソールを搭載。ハイキングブーツとして、人々が好んで履くようになった。   その後、1979年にゴアテックスファブリックを採用。現在のダナーの原型が生まれる。 ダナーライトのローカット(ラクロス・フットウエア製)。 ロンドンっ子がドクターマーチンを履けば、ポートランドの山男たちはダナーを履く。トラディショナルなクラークスも然り。現代でもそのスタイルは脈々と受け継がれている。

雨でも傘をささない英国人 バブアーとアクアスキュータムの絶大なる信頼性

雨でも傘をささない英国人 バブアーとアクアスキュータムの絶大なる信頼性

「英国人は雨でも傘をささない」というのは有名な話で、本当の話。例えばロンドンだと、年間降雨量が東京の1/3程度ほど。それでも日本のような梅雨があるわけでもなく、一年中、小雨が降ったり止んだりしている。まさに霧の街ロンドンだ。 傘をさしている人はまばら。おそらく観光客と思われる。 では、英国人がどのようにして雨をしのぐかと言うと、ジャケットにフードが定番。ラフな格好の学生もスーツをまとったビジネスマンも、フードをかぶって小走りしている姿をよく見かける。朝ならば片手にティーも持って、お昼時はフィッシュアンドチップスを。夕方過ぎのパブの前では、小雨のなか、フードをかぶってパイントビールとタバコで過ごす(英国ではパブの中での喫煙が法律で禁止されている)。 それほど「雨に濡れることをさほど気にしていない」「雨が降ったり止んだりするから」「そもそもめんどくさい」のが英国人たちの本音だ。そんな英国人たちだが、身だしなみには人一倍気を使う。雨をしのぐジャケットも、英国紳士はきちんとしたコートやジャケットを身にまとう。今でこそアウトドアブランドのレインウェアを着ている人も珍しくはないが、古くから英国の定番として人々に愛され続けているブリティッシュ・プライドを紹介しよう。 ハンティングにルーツを持つ2つのコート 英国生まれのコートといえばBURBERRY(バーバリー・1856創業)、Aquascutum(アクアスキュータム・1851年創業)が代表格。バーバリーといえば「バーバリーチェック」が有名だが、アクアスキュータムは「ガンクラブチェック」と呼ばれる伝統のハンティング柄。このチェックが同ブランドの顔となっている。 アクアスキュータム「LEIGHTON」。スリップオンなスタンダードコートで、カジュアルにもビジネスにもよく合う。 そして、ワックスドクロスのBarbour(バブアー・1894年)の定番ジャケット「BEAUFORT」もハンティング用に作られた製品。バブアー自体、もともとは港湾労働者たちのワークウェアとして誕生したブランドで、高い防水・防風性能は狩猟時の雨除けとしても重宝された。 バブアー「BEAUFORT WAXED COTTON」。ワックス仕立てのコートとして、あまりにも有名。 雨を防ぐ水の盾、アクアスキュータム アクアスキュータムは、ロンドン・リージェントストリートの高級服仕立屋としてビジネスをスタート。防水加工を施したウール生地を作り出し、特許を取得。「アクアスキュータム」はラテン語で“水の盾”を意味する。 その機能性の高さから英国軍人から王室まで、幅広く好まれるブランドとなり、ウィントン・チャーチル、マーガレット・サッチャー元首相らも愛用者のひとりである。 前述のとおり、アクアスキュータムの裏地はガンクラブチェック柄。このパターンはハンティングユニフォームとして用いられている。英国においてハンティングは貴族のスポーツ。王室御用達ブランドがこのチェック柄を用いたのもうなずける。 水を弾く、強力なワックスドクロス 生地の表面をワックスでコーティングしたのが、バブアーのワックスドクロスコート。バブアーはイングランド北東部の港町、サウス・シールズで生まれたブランドで、水や風に強い生地が漁師や港湾労働者たちを寒さから守った。その後、過酷な環境下でも身を守れるライダースジャケットとしても人気を博すようになる。 バブアーの裏地は「ブラックウォッチチェック」と呼ばれるタータンチェック柄で、英国軍にも採用されたもの。バブアーはアクアスキュータムと同じく、王室御用達ブランドでもある。 ハンティングジャケットのBEAUFORT WAXED COTTONは、インナーやフードをオプションで付けることができる。とくにフードは、雨をしのぐ傘代わりにかぶるのにちょうどいい。 なお、ジャケットもインナーも、さほど洗濯しないのがバブアー流。汚れを拭き取るだけが基本で、シーズンオフには専用のワックスを薄く塗って保管する。この儀式がバブアーならではで、なんとも心地よい。 英国人は雨でも傘をささない、というのも、同国を代表する防水コート&ジャケットをみるとうなずける。けっして安いものではないが、ずっと着られる“定番”なのがうれしい。「一生モノ」を語れる逸品だ。