アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

日本のメンズファッションにおいて「アメトラ(アメリカン・トラディショナル)」は王道スタイルです。ただ“アメトラ”と聞くとどんな服装を想像しますか?

 

VANの打ち出した「アイビールック」のようなファッション? ラルフローレンが提案した「ブリティッシュ・アメリカン」? もしくは80年代のプレッピーや渋カジの「キレカジ

」? または2000年代にトムブラウンが発表していた50年代後半〜60年代後半の「トラディショナル・アメリカ」を彷彿とさせるスタイルを連想する人もいますよね。

 

答えはどれも“アメトラ”です。正確にはそれぞれ違うスタイルですが、どれも同じ1ジャンルと考えるといいでしょう。

 

日本における「アメトラ」の礎は、VAN創始者の石津謙介氏によって「アイビールック」として定着。そのためVANのアイコン的な“紺ブレ(紺のブレザー)”は、一着は持っておきたいモノで、大事なのは、それを知った上で自分らしく着るということだと思います。

■アイビーな“紺ブレ”とは

ブレザーはもともと競技用のジャケットでした。そのためジャケットに比べると程よいぬけ感があり、それが今の時代とマッチしています。また定番中の定番アイテムなので、流行に左右されにくい上に、ビジネスのジャケパンスタイルにも、着崩してカジュアルスタイルにも合わせられる着回しが効く汎用性も魅力です。

 

段返り三つボタンで金のメタルボタン、ナチュラルショルダー、ボックスシルエット、センターベントというのが、いわゆるアイビーの “紺ブレ”のど真ん中ですが、時代と共に少しずつディテールは変わっていきます。

↑二つボタンの金のメタルボタンでサイドベンツ。「ラルフローレンらしいニュー・イングランドスタイルな“紺ブレ”。ラルフローレンのブレザー/税抜8万2500円(セプティス)

紺ブレにはダブルとシングルとありますが、最初はシングルをおすすめします。西洋人に対して小柄な日本人は、ダブルだとちょっと窮屈な印象になるほか、シングルの方がエレガントになりすぎず着回しがしやすいからです。

■ネクタイの柄にも存在する「アメトラ」「ブリトラ」の区別

ネクタイにも「アメトラ」らしいスタイルはあります。代表的なのはブルックスブラザーズの“右下がりのレップタイ”です。

△左下がりの縞模様が「ブリトラ(ブリティッシュ・トラディショナル)」。右下がりの縞模様が「アメトラ」。アイクベーハーのシャツ/共に1万7280円、<右>ベントレークラバッツのネクタイ/1万1880円(セプティス)、<左>ネクタイ/スタイリスト私物

レップタイとは、光沢のある畝織りの生地で作られたネクタイのことで、代表的な柄としてレジメンタルストライプの縞柄があります。英国の定番であるこのレジメンタルストライプにブルックスブラザーズは注目し、同じように作るのではなくそこに工夫を加えました。もともとは左下がりだった縞模様を反転して右下がりの縞模様にすることでアメリカ流にアレンジしたのです。このようにストライプのネクタイをしめる際には、柄の下がる方向にも注目してみると、よりアメトラファッションを楽しめるでしょう。

■シャツの定番はオックス地の白いボタンダウンシャツ

またアメトラの定番シャツといえば白のボタンダウンシャツ。そしてこのボタンダウンシャツを作ったのもブルックスブラザーズです。創業者の孫、ジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦しているときに、選手のユニフォームの襟が風であおられてプレーの邪魔にならないようにと襟先が留められていたのに注目。その発想をシャツに応用することでボタンダウンシャツが誕生しました。この逸話からポロカラーシャツと呼ばれています。

△全てボタンダウンシャツ。色や柄はなんでもOK。オックスフォード地でボタンダウンであることが何より大事。<左>アイクベーハーのシャツ/1万7280円、<下>サックス/1万7280円、<右>ストライプ/1万7280円、<上>キートンケースのチェックシャツ/1万9980円(セプティス)

ボタンダウンは“白オックス”がベストです。オックスフォード地は地厚であるため、今のようにノンアイロンのシャツなどがない時代は洗いざらしでも、形崩れすることなくシワが目立ちにくい上に、襟元のボタンを留めるだけで品よくなるため、簡単でオシャレという理由から人気のシャツになったそうです。

 

由来が競技用のシャツということもあり、カジュアルとして位置付けられますが、ジャケパンスタイルなどビジネスとカジュアルの境目があやふやな現代では、少しラフ感のあるボタンダウンシャツは人気アイテムです。

■今らしい紺ブレの着こなし

“紺ブレ、ストライプシャツ、白のボタンダウンシャツ”とアメトラのポイントを抑えてきましたが、これをスタイリングしてしまうと、学生っぽいファッションになったり、ともすればコスプレ感が出たりしてしまうので注意が必要です。

そこで“紺ブレ”を軸にしてネクタイやシャツを違う色や柄に変えることでスタイルがグッと今っぽくなります。以下のスタイリングを参考にしてみてください。

共通して使ったのは「紺ブレ」「ローファー」「腕時計」「メガネ」の4点ですが、それぞれ印象が変わってきます。ただ、“アメトラ”というテーマが共通しているのがおわかりでしょうか。着回しをしてもアメトラスタイルに当てはまる、これが「紺ブレ」の魅力で、1着は持っておいた方がいいと言われている理由です。

△カルレイモンの時計/36,300円、

基本的にファッションは自由です。しかし、日本の「アイビールック」にはルールが存在します。

 

当のアイビーリーグの大学生達は当たり前に自然体で過ごしていただけなのですが、その自然体のカッコよさに石津謙介氏は衝撃を受けたそうです。そんな憧れのファッションを日本に持ち込みたいと考えるようになった結果、アイビーリーガー達を観察し一定のルールを作りました。そして時を経て、アメリカは日本人が作る「アメトラ」を逆輸入することになるのです。

 

このように、アメトラを通してファッションの歴史の流れを学べるのが“紺ブレ”の楽しさでもあるのです。

TEXT & PHOTO/宇田川雄一



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