Author: 宇田川雄一

海軍発祥の機能美と歴史が魅力な「Pコート」の基礎知識

海軍発祥の機能美と歴史が魅力な「Pコート」の基礎知識

■ピーコートの「ピー」って何?定番すぎて知らなかったピーコートの歴史 スーツとの相性もよくカジュアルに合わせても上品な印象を与えてくれることから人気の定番アイテム「ピーコート」。 元々は19世紀末から英国海軍が艦上用の軍服として着用していた防寒服が由来で、フランス・ブルターニュ地方の漁師たちも愛用していたと言われています。 そのため変化が激しく厳しい海上の気候条件においても、海軍の兵士や漁師が効率的に活動するための機能性が重視されたコートです。 「ピーコート」の「ピー」という言葉の由来は諸説あり、オランダ語の「pij jekker(ピーヤッケル)」という厚手のウールコートという言葉の「piji」の頭文字からとったという説と、「錨(いかり)の爪」を意味する「Pea」の頭文字からとったという説があります。 ■Pコートを定義する5つのディテール フィデリティのPコート/3万2780円(アイメックス) タイトシルエットと上品なデザインからオン/オフで使えるの大人のショートコートとして人気のピーコートですが、ダブルブレストでショート丈ならピーコートかというとそういう訳ではありません。意外と知られていない5つの特徴的なディテールからピーコートは成り立っています。 ポイント①「ラペル」 ピーコートの一番の特徴である大きなラペル。正式名称はありませんが、形状が近いことから一般的に「リーファーカラー」と呼ばれています。風や波音・船の騒音などで声が聞き取りづらい甲板上で、襟を立てて集音効果を高めることを目的として大きく設計。機能性を重視したデザインは結果的にエレガントで上品な印象を与える要素になっています。 ラペルの下襟はボタンで留めることが可能。上まで留めることで防寒性と防風性を高めてくれます。 集音効果を高めるために大きく作られた上襟。チンストラップもついていることから防寒目的でも使われていたことがわかります。 ポイント②「ダブルブレスト」 海上において避けて通れないのが激しい風。そのため、ピーコートは防風性を高めるたにダブルブレストを採用。また、ダブルブレストにすることで左右どちらの身ごろが上前でもボタンが締められる設計になっており、あらゆる方向から風が吹く船上の環境下でも防風の役目を果たします。 最近ではシングルブレストのピーコートも見かけたりしますが、本格的なピーコートを求めているならダブルブレストは外せないポイント。フロントボタンの数は8〜10個が定番です。 ポイント③「メルトン素材」 ピーコートの定番は厚みがあって柔らかい手触りと高い保温性が特徴のメルトン素材。ウールを縮絨することで隙間をなくして作られた高密度で重厚感のあるウール生地のことで、ウールながら防風性が高く保温力もあるため、冬コートの素材として人気です。 タフで長持ちする反面、隙間なく作られている素材はコート自体が重たくなるというデメリットもあります。ちなみに、ピーコートの定番色はネイビーですがこれは海の色の保護色として採用されているためです。 ポイント④「マフポケット」 垂直に切り口が入ったデザインが特徴の「マフポケット」は「ハンド・ウォーマー・ポケット」とも呼ばれ、寒い甲板の上で手を温めるために作られたディテールです。両側から腹部のあたりに手を入れられるようになっているため、ちょっと高めの位置に設計されているのもポイント。マフとは毛皮でできた円筒形の防寒具のことで形が似ていることから「マフポケット」と呼ばれています。 ポイント⑤「ボタン」 海軍の象徴である錨(いかり)のデザインがあしらわれたボタンもピーコートの特徴の一つ。初期は木製のものが多く使われていましたが、最近ではプラスチックのものが主流に。写真のこのボタンはアメリカ製ピーコートの定番ブランドであるフィデリティのもの。 1930年代の米軍大戦モデルをモチーフに、アメリカ建国時の13州からくる13スターが刻印された錨ボタンです。イギリス製の場合は錨の周りに星のデザインはなく、国やブランドによる錨ボタンのデザインの違いを楽しめるのもピーコートならではの魅力です。 タイトフィットでスタイルがよく見えることから冬のショートコートとして人気のピーコートですが、その上品なデザインは海軍の過酷な環境をより快適に過ごすために考えられた機能美によるもの。歴史を知ることでそのアイテムにもっと愛着が湧いてくるのもメンズウェアならではの魅力であり醍醐味です。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

アメトラ初心者に“紺ブレ”をおすすめする理由

日本のメンズファッションにおいて「アメトラ(アメリカン・トラディショナル)」は王道スタイルです。ただ“アメトラ”と聞くとどんな服装を想像しますか? VANの打ち出した「アイビールック」のようなファッション? ラルフローレンが提案した「ブリティッシュ・アメリカン」? もしくは80年代のプレッピーや渋カジの「キレカジ 」? または2000年代にトムブラウンが発表していた50年代後半〜60年代後半の「トラディショナル・アメリカ」を彷彿とさせるスタイルを連想する人もいますよね。 答えはどれも“アメトラ”です。正確にはそれぞれ違うスタイルですが、どれも同じ1ジャンルと考えるといいでしょう。 日本における「アメトラ」の礎は、VAN創始者の石津謙介氏によって「アイビールック」として定着。そのためVANのアイコン的な“紺ブレ(紺のブレザー)”は、一着は持っておきたいモノで、大事なのは、それを知った上で自分らしく着るということだと思います。 ■アイビーな“紺ブレ”とは ブレザーはもともと競技用のジャケットでした。そのためジャケットに比べると程よいぬけ感があり、それが今の時代とマッチしています。また定番中の定番アイテムなので、流行に左右されにくい上に、ビジネスのジャケパンスタイルにも、着崩してカジュアルスタイルにも合わせられる着回しが効く汎用性も魅力です。 段返り三つボタンで金のメタルボタン、ナチュラルショルダー、ボックスシルエット、センターベントというのが、いわゆるアイビーの “紺ブレ”のど真ん中ですが、時代と共に少しずつディテールは変わっていきます。 ↑二つボタンの金のメタルボタンでサイドベンツ。「ラルフローレンらしいニュー・イングランドスタイルな“紺ブレ”。ラルフローレンのブレザー/税抜8万2500円(セプティス) 紺ブレにはダブルとシングルとありますが、最初はシングルをおすすめします。西洋人に対して小柄な日本人は、ダブルだとちょっと窮屈な印象になるほか、シングルの方がエレガントになりすぎず着回しがしやすいからです。 ■ネクタイの柄にも存在する「アメトラ」「ブリトラ」の区別 ネクタイにも「アメトラ」らしいスタイルはあります。代表的なのはブルックスブラザーズの“右下がりのレップタイ”です。 △左下がりの縞模様が「ブリトラ(ブリティッシュ・トラディショナル)」。右下がりの縞模様が「アメトラ」。アイクベーハーのシャツ/共に1万7280円、<右>ベントレークラバッツのネクタイ/1万1880円(セプティス)、<左>ネクタイ/スタイリスト私物 レップタイとは、光沢のある畝織りの生地で作られたネクタイのことで、代表的な柄としてレジメンタルストライプの縞柄があります。英国の定番であるこのレジメンタルストライプにブルックスブラザーズは注目し、同じように作るのではなくそこに工夫を加えました。もともとは左下がりだった縞模様を反転して右下がりの縞模様にすることでアメリカ流にアレンジしたのです。このようにストライプのネクタイをしめる際には、柄の下がる方向にも注目してみると、よりアメトラファッションを楽しめるでしょう。 ■シャツの定番はオックス地の白いボタンダウンシャツ またアメトラの定番シャツといえば白のボタンダウンシャツ。そしてこのボタンダウンシャツを作ったのもブルックスブラザーズです。創業者の孫、ジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦しているときに、選手のユニフォームの襟が風であおられてプレーの邪魔にならないようにと襟先が留められていたのに注目。その発想をシャツに応用することでボタンダウンシャツが誕生しました。この逸話からポロカラーシャツと呼ばれています。 △全てボタンダウンシャツ。色や柄はなんでもOK。オックスフォード地でボタンダウンであることが何より大事。<左>アイクベーハーのシャツ/1万7280円、<下>サックス/1万7280円、<右>ストライプ/1万7280円、<上>キートンケースのチェックシャツ/1万9980円(セプティス) ボタンダウンは“白オックス”がベストです。オックスフォード地は地厚であるため、今のようにノンアイロンのシャツなどがない時代は洗いざらしでも、形崩れすることなくシワが目立ちにくい上に、襟元のボタンを留めるだけで品よくなるため、簡単でオシャレという理由から人気のシャツになったそうです。 由来が競技用のシャツということもあり、カジュアルとして位置付けられますが、ジャケパンスタイルなどビジネスとカジュアルの境目があやふやな現代では、少しラフ感のあるボタンダウンシャツは人気アイテムです。 ■今らしい紺ブレの着こなし “紺ブレ、ストライプシャツ、白のボタンダウンシャツ”とアメトラのポイントを抑えてきましたが、これをスタイリングしてしまうと、学生っぽいファッションになったり、ともすればコスプレ感が出たりしてしまうので注意が必要です。 そこで“紺ブレ”を軸にしてネクタイやシャツを違う色や柄に変えることでスタイルがグッと今っぽくなります。以下のスタイリングを参考にしてみてください。 共通して使ったのは「紺ブレ」「ローファー」「腕時計」「メガネ」の4点ですが、それぞれ印象が変わってきます。ただ、“アメトラ”というテーマが共通しているのがおわかりでしょうか。着回しをしてもアメトラスタイルに当てはまる、これが「紺ブレ」の魅力で、1着は持っておいた方がいいと言われている理由です。 △カルレイモンの時計/36,300円、 基本的にファッションは自由です。しかし、日本の「アイビールック」にはルールが存在します。 当のアイビーリーグの大学生達は当たり前に自然体で過ごしていただけなのですが、その自然体のカッコよさに石津謙介氏は衝撃を受けたそうです。そんな憧れのファッションを日本に持ち込みたいと考えるようになった結果、アイビーリーガー達を観察し一定のルールを作りました。そして時を経て、アメリカは日本人が作る「アメトラ」を逆輸入することになるのです。 このように、アメトラを通してファッションの歴史の流れを学べるのが“紺ブレ”の楽しさでもあるのです。 TEXT & PHOTO/宇田川雄一

冬コートの定番「トレンチコート」を知るための5つのディテール

冬コートの定番「トレンチコート」を知るための5つのディテール

■トレンチコートとは

定番コートの一つである「トレンチコート」。元々は第一次世界大戦時のイギリス軍が開発した寒冷地用防寒コートで、「トレンチ」とうい言葉は「塹壕」という意味があります。名前からも第一次世界大戦の「塹壕戦」を乗り切るために作られたコートであることが理解できます。

また、トレンチコートと言えばBurberry(バーバーリー)と(Aquascutum)アクアスキュータムが有名で、実用性を備えた機能とスタイリッシュなルックスはファッションアイテムとしても定番化。ビジネスはもちろんカジュアルにも合わせやすく時代に流されない定番コートです。

「塹壕戦」を乗り切るための防水アウターとして作られた背景だけに、他のミリタリーコートよりも細かいディテールが多いのも特徴。最近では忠実に再現するブランドは少なく、ディテールもミニマル化されてきていますが、その中でも押さえておきたいディテールを紹介していきましょう。

ディテール①「エポーレット」

エポーレットとは、「肩章(けんしょう)」また「肩飾り」の意味で、肩のところに付くバンド状の布のことをいいます。元々は軍服に銃や双眼鏡などの装備品を固定したり、階級を示すバッジをつけるものと付けられたと言われています。

ディテール②「ガンフラップ」

ライフルを撃つ際に銃床を当てて衝撃を和らげるための工夫として誕生したディテール。また、襟のボタンを全て留めた状態の時に上から被せれば、肩からの雨垂れの進入を防ぐことが可能に。そのことから「ストーム・フラップ」とも呼ばれています。

ディテール③「アンブレラヨーク」

トレンチコートにある、肩から背中にかけてフラップのような部分のことを言い、二重構造になっていて通気性の確保と雨の侵入を防ぐことを目的として作られました。これは「ストーム・シールド」と呼ばれることもあります。ちなみに“ヨーク”とは、衣服の切替部分のことで、そこに当てた布を表しています。

ディテール④「ダブルブレスト」

ダブルブレストとは、前身頃の幅が広く重なっていて、ボタンが2列に並んだコートのこと。もともとは両前にできるのを目的として作られたディテールです。また、「breasted(ブレステッド)」は英語で「胸」を意味します。

ディテール⑤「スリーブストラップ」

風雨が強いときに袖口を締めてこれを防ぐとともに、腕の動きで袖がまくり上がらないように取り付けられたバックルを装着した袖ベルト。「アームベルト」とも呼ばれることもあり、最近ではボタン式タイプのものも多くなっています。

自分なりの着こなし方を身につければ楽しさが広がる

ビジネスコートの定番の多くはミリタリーコートが起源。それはスーツ自体の起源も軍服が派生してできたものだから相性がいいのも頷けるでしょう。また、カジュアルに着こなしたい場合にダブルブレストのものはちょっと格式が高く見えてしまいがちですが、パーカーやスニーカーなどコート以外はラフなアイテムを選べば日常でも着用しやすくなります。そのアイテムの歴史やディテールを知り、それぞれの役割や価値を実感すれば男性のファッションはより楽しくなりますよ。

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ボリュームアップで周りと差がつく。よりエレガントなネクタイの結び方

ボリュームアップで周りと差がつく。よりエレガントなネクタイの結び方

ネクタイは、立体感をつくることでより上品に見える効果があります。 「プレーンノット」「セミウィンザー」はビジネスで重宝される結び方は多くの人が実践している結び方。これらをボリュームアップさせることでより立体的でエレガントに魅せる結び方が「ダブルノット」「ウィンザーノット」と呼ばれる結び方です。エレガントな結び方のため、パーティなどのフォーマルな場に適した結び方とされています。また、細身や心地が薄いネクタイなどボリュームが出にくい時にもおすすめの結び方です。 また、秋冬の素材であるメルトンやフランネルなど、重厚感のあるスーツとの相性もバッチリ。スーツやシャツに合わせてネクタイのボリュームをコントロールすることでデキる男を演出してみてください。 ■「ずらし」でこなれ感を!ボリュームアップにおすすめの「ダブルノット」 プレーンノットを二重巻きにした「ダブルノット」は、プレーンノットよりもボリュームを出したい時におすすめの結び方で、レギュラーカラーやワイドカラーのシャツと相性◎。縦長で左右非対称な結び目がになりますが、プレーンノット同様にシンプルな結び方が特徴です。 ネクタイによってはボリュームが出過ぎてしまうため、シャツやスーツとのバランス感覚が大事とはいえ、 結び目をちょっとずらしてあげることで、プレーンノットよりもこなれ感を演出できます。 <ステップ①> 大剣を長めにとり、小剣の上にくるようにクロス。プレーンノットで結ぶ時よりも小剣を短くとりましょう。 <ステップ②> 上に重ねた大剣を後ろから回します。この時、小剣を谷折りにしておくと最後ディンプルが作りやすくなります。 <ステップ③> 大剣を一巻きしたら、もう一周。一巻き目をきつく絞らず、指を入れておくと後々ネクタイが結びやくなります。 <ステップ④> 大剣を二巻きしたら、V字になった隙間に後ろから通し前に持ってきます。 <ステップ⑤> 指を入れていた一巻き目の間に大剣を通します。二巻き目の間に通すやり方もありますが、今回はプレーンノットと差をつける結び目を作りたいので、一巻き目の間に通しましょう。 <ステップ⑥> 大剣をつまみながらディンプルを作成。ここで大剣を下に引っ張ると結び目が硬くなります。 <ステップ⑦> 次に小剣を下に引っ張ると結び目が上がっていきます。 <ステップ⑧> 結び目が緩くなりやすいので、大剣を引っ張り、結び目を整えながら高さを調節したら完成です。一巻き目と二巻き目をずらすと、こなれた感が演出できます。 ■クラシックでエレガント!逆三角形で清潔感のある「ウィンザーノット」 左右対称でボリュームある逆三角形が特徴の「ウィンザーノット」は、しっかりとした結び目で形崩れしにくいのも魅力です。エレガントで清潔感のある結び方になっており、大事な会議やフォーマルな場で相手に印象付けたい時におすすめの結び方。 また、「セミウィンザーノット」をよりボリュームアップさせたい時に用いられることが多く、ワイドカラーやホリゾンタルカラーのシャツと相性◎。ちなみに、「ウィンザーノット」は「フルウィンザー」とも呼ばれクラシカルで人気の結び方です。 <ステップ①> 大剣を小剣の上になるように配置します。セミウィンザーやダブルノットよりも小剣を短くとります。ネクタイによってこの長さは変わってくるため、長さの調整が他の結び偏りも難しく感じます。 <ステップ②> 大剣をV字になった隙間に後ろから通し、前に持ってきます。 <ステップ③> 前に持って来たら、小剣の左側に戻します。 <ステップ④> 結び目の裏側を通して小剣の右側に回します。 <ステップ⑤> 小剣の右側に持って来た大剣を、V字の部分に前から後ろに通します。 <ステップ⑥> この時点で逆三角形の土台を作ることを意識してください。また、首回りのループと小剣の三箇所にえくぼを作ると最後に綺麗な仕上がりに。 <ステップ⑦> 大剣を結び目の周りをぐるりと一周させます。 <ステップ⑧> 大剣を後ろまで持って来たら、V字になった隙間に後ろから通し前に持ってきます。 <ステップ⑨> 結び目に大剣を通します。 <ステップ⑩>…

ビジネスから冠婚葬祭まで。顔を品よく引き立てるネクタイの結び方

ビジネスから冠婚葬祭まで。顔を品よく引き立てるネクタイの結び方

ネクタイはきちんとした結び方をするだけで、スマートな雰囲気を作ることができ、その人を印象付ける上で重要なファクターになります。 ただ、どんな結び方でもいいわけではありません。ビジネスシーンにおいて華美が過ぎたスタイルは近寄りがたい印象を与え、マイナスに働く場合も…。最近のスーツでいえばスマートで軽量な素材や、無地やピンストライプのようなシンプルなデザインがトレンド。 そこでネクタイの結び方は、オーソドックスだけど清潔感もありながら程よい品を与えてくれる、「プレーンノット」と「セミウィンザーノット」がおすすめです。 オーソドックスな結び方「プレーンノット」 最も基本的な結び方で、結び目が小さくすっきりした印象を与えます。ほとんどのシャツのえり型に対応できる万能な結び方で、ビジネスから冠婚葬祭まであらゆるシーンに対応。リクルートの際も派手にならない使い勝手の良さがあります。 また、ちょっと縦長で左右対称にならずラフな印象もあるため、カジュアルをタイドアップするときにもおすすめです。着脱によるネクタイへの負担が少なく短時間で簡単に結べることからも、基本としてマスターしたい結び方なので、以下6つのステップを覚えてください。 <ステップ①> 大剣を長めにとり、小剣の上にくるようにクロス。上に重ねた大剣を後ろから回します。 <ステップ②> さらに大剣を小剣の周りで一周させます。 <ステップ③> 大剣を右下からV字になった隙間を通し、後ろから前に持ってきます。 <ステップ④> 前に持ってきた大剣をループ状になったところに通します。このとき、小剣を谷折りにしておくと後々ディンプルが作りやすいです。 <ステップ⑤> 大剣をつまみながらディンプルを作成。ここで大剣を下に引っ張ると結び目が硬くなります。 <ステップ⑥> 次に小剣を下に引っ張ると結び目が上がっていきます。結び目が緩くなりやすいので、大剣を引っ張り、結び目を整えながら高さを調節したら完成です。 程よいボリュームの「セミウィンザーノット」 プレーンノットに比べて逆三角形に近い結び目を作りやすいのが「セミウィンザーノット」です。結び目が大きすぎず小さすぎない、程よいサイズ感でスマートな印象を与えてくれます。どんな襟にも合わせやすくディンプルも作りやすいため、ビジネススタイルには一番おすすめの万能な結び方です。 <ステップ①> 大剣をプレーンノットのときより長めにとり、小剣の上になるようにクロスし一周させて元の配置に戻します。大剣をV字になった隙間に前から通します。 <ステップ②> 隙間に通した大剣を最初の配置に戻します。 <ステップ③> この時、小剣を谷折りしておくのもポイントです。また、逆三角形を形作っておくと結び目が逆三角形になりやすくディンプルも作りやすくなります。 <ステップ④> 大剣を一周させたらV字になった隙間に後ろから通し前に持ってきます。 <ステップ⑤> 大剣のディンプルを作りながら下に引っ張ります。大剣を引っ張ると結び目が硬くなります <ステップ⑥> 結び目がある程度硬くなったら、V字の部分を両サイドに引っ張ります。これにより結び目が逆三角形になります。 <ステップ⑦> 小剣も谷折りをキープしながら下に引っ張ると、結び目の高さが調整されます。首元まで高さを調整できたら完成です。小剣を引っ張るときに結び目が崩れやすいので、大剣→小剣→大剣→小剣と少しずつ調整しながら閉めてあげると綺麗な結び目が作れます。 よく電車などで結び目がダボっとしている人を見かけますが、小剣だけ引っ張って高さだけを調整しているのかなと感じます。大剣を引っ張りながら結び目をしっかりすれば形がきれいになり、周囲の人より美しい首元を作れると思いますので、チャレンジしてみてください。 AUTHER/宇田川雄一

ボタンの留め方から小物の使い方まで。スーツをカッコよく着こなす5つのポイント

ボタンの留め方から小物の使い方まで。スーツをカッコよく着こなす5つのポイント

漠然とスーツを着ていたりしませんか? 実はスーツの着こなしには多くのルールが存在します。ルールと聞くと面倒に感じるかもしれませんが、逆に言うと、初歩的な事さえしっかり押さえておけば、スーツほど自信を持って着こなせる服はありません。

 

カジュアルの場合は、流行のアイテムやシルエット・素材などトレンドの状況で変わりますが、スーツなら多少のトレンドはあるものの、着こなしのルールには変化がありません。

 

今回は数あるルールの中でも特にトレンドに左右されない、基本となる5つのルールを紹介します。

スーツのルール:その①

シャツとジャケットは袖丈のバランスが大事

スーツにとって一番大事なのはサイジングです。特にジャケットとシャツのバランスはとても重要。肩幅やウエスト・着丈など注意するところはたくさんありますが、既製品のスーツをジャストサイズで着ているように見せるためには、まず“袖丈”を注意しましょう。

ジャケットの適切な袖丈の長さは、腕を自然に下ろした時に腕のくるぶしが隠れるくらいの長さが理想。もしくは、親指の先から11~12cmを目安にすると良いと言われています。要するに指先からシャツまでの見た目が重要ということです。

 

そして一番大事なのが、シャツとのバランス。シャツはジャケットの袖から1~1.5cm覗くのくらいがベストになります。このルールは、シャツなら汚れても洗えることから、ジャケットよりちょっと長くする習慣に由来しているそうです。

スーツのルール:その②

高級感を出すなら小物は同色で揃え統一させる

パッと見の印象で大きな要素を占めるのが小物です。ネクタイ・メガネ・バッグ・腕時計・ベルトなどの色を統一するだけで、グッと品のあるスタイリングになり安定感が上がるほか、素材も意識して揃えると、よりエレガントなスタイリングに近づきます。

△カルレイモンの時計「Stainless Steel with White Dial」/3万500円、ジャラン スリウァヤのシューズ/3万6000円、ホワイトハウスコックスのベルト/1万7000円(バーニッシュ)、マッキントッシュトロッターのブリーフケース/2万3000円(エース)*10月発売予定、オリバーピープルズの眼鏡/2万8600円(オプティカルテーラークレイドル青山店)<税抜き価格>

たとえば、“ビジネスシーン”ならブラックで統一するのがおすすめ。カッチリしすぎたくない時にはアリですが、ブラウンのシューズはどうしてもカジュアルなイメージを与えてしまいます。カバンや時計など簡単に色を統一できない場合は、最低でも靴とベルトの色は合わせましょう。それだけでもスタイリングがしっかりと締まります。

 

また、最近流行りの機能的なナイロンバックでも、色を意識してあげるだけ統一感が上がりスタイリングが引き締まります。ちなみに、シルバーもモノトーンな印象を与えるため黒との親和性が高いアイテムです。

スーツのルール:その③

基礎中の基礎!ジャケットのボタンの留め方

ジャケットのボタンの留める箇所にもルールがあります。三つボタンの場合は上ふたつ、二つボタンの場合は上ひとつです。また、第一ボタンがラペル裏に隠れる仕様のジャケットである、「段返り」という三つボタンのスーツの場合は、「中1つ掛け」になります。どの仕様でも一番下のボタンは飾りなので、外すのが基本になります。

三つボタンとふたつボタンで、どちらがオシャレということはありません。ただ、三つボタンのスーツは若々しい印象を与えることもあり、最近のビジネススーツではVゾーンをより広く見せられるふたつボタンか、段返り三つボタンが好まれています。

 

ちなみに、座っている時はボタンを全部外します。以前観た海外の映画では、座ったり立ったりする時に、いちいちボタンの開け閉めをしていました。ちょっと面倒ですが、この動作を自然にこなせると、スーツならではの“所作”になり色気がグッと増すため、是非とも実践したいスーツマナーです。

スーツのルール:その④

ネクタイはディンプルを作る

結び方、ラベルとの幅の相関性、シャツとのバランスなど色々と注意することはありますが、ネクタイをする時に一番大事なのは「ディンプル(えくぼ)」を作ることです。ディンプルはネクタイに立体感を持たせて華やかに見せる効果があります。

 

結び方にコツが必要なため、ディンプルを作れてる人は少ないですが、裏を返せばディンプルを作れるだけで他の人と着こなしに差をつけられます。顔に近いネクタイは印象に残り易い部分ですから、ディンプルを作ることでデキる男を演出してみてください。

ここで、注意しなければいけないのが、「葬儀」の際はディンプルを作ってはいけません。立体的で華やかさを演出するディンプルは、場に相応しくないからです。逆に結婚式の場合はディンプルを忘れずに作りましょう。

スーツのルール:その⑤

手を抜きがちな靴下の色にもテクニックあり

ここまで4つのルールを押さえてきましたが、うっかり手を抜いて全てを台無しにしかねないのが靴下の色です。スポーツソックスを合わせるなどは当然NGとして、今流行っている黒の革靴に白いソックスという組み合わせも、ビジネスシーンではNGになります。

 

正しくは、靴の色かパンツの色と揃えてあげると良いでしょう。ただ革靴は色移りし易いので、靴と靴下の色を揃える方がおすすめです。

いろいろと難しいような気がしてしまうスーツの着こなし方ですが、しっかりとポイントを覚えておけば、ビジネスの上でも一目置かれる存在になるのは間違いありません。

TEXT & PHOTO/宇田川雄一

「革靴のフォーマルな履き方と知っておくべき基礎知識」

「革靴のフォーマルな履き方と知っておくべき基礎知識」

ファッションの格式を上げてくれる革靴は、履いていれば“フォーマル”というわけではありません。十把一絡げに革靴といっても、「ローファー」のように“カジュアル”として分類されるアイテムもあります。フォーマルに履きこなすために必要なのは、闇雲に高価格やハイブランドを選ぶのではなく、靴のフォーマル度がスタイリングやTPOに合っているかどうかが重要になってきます。 そこで革靴選びの基礎について学んでいきましょう。シルエット、アッパーの素材、ソールの種類と要素はさまざま。中でも重要な「靴ひもの有無」、「内羽根式/外羽根式」などのスタイル、「ストレートチップ/ウイングチップ」などのデザインについて知るだけで、靴の選び方が大きく変わってきます。せっかくの革靴をオシャレに履きたいのであれば、基本を押さえて大人らしいスタイルと、TPOに適した選び方を身に着けてください。 靴の「スタイル」を知ることがフォーマル度のはじめの一歩 まず革靴には、ひも靴やスリッポンなどを分類する“スタイル”があり、それによって大まかなフォーマル度が決まってきます。ひも靴の内羽根式→ひも靴の外羽根式→ストラップ→スリッポンという型の順でフォーマル→カジュアルに近づいていきます。 そこで、まず「内羽根式」とは、靴ひもを通すハトメの取付け部がアッパーと一体、もしくは甲革の下に入るように作られているタイプのことを言います。 「外羽根式」は、ハトメの取付け部がアッパー革の上部に縫い付けられるように作られているため、内羽根式に比べてフィット感の調整が簡単で、着脱しやすい機能性があります。そのため、ビジネスでの用途でも好まれています。 フォーマルな内羽根式と、ビジネスからカジュアルまで汎用性の高い外羽根式に分別するとよいでしょう。 最もフォーマルな「内羽根式ストレートチップ」 ひも靴やスリッポンといったスタイルを意識した後に、デザインのフォーマル度を意識します。ビジネスにおいて最もフォーマルな革靴は、つま先に横一文字の切り替えが入ったデザインが特徴の「内羽根式ストレートチップ」です。 ストレートチップは、別名「キャップトゥ」とも呼ばれ元々は軍隊がつま先の補強のために革を当てたことに由来します。 ビジネススーツはもちろん、冠婚葬祭や就職活動でもかしこまった場面で使える、一足は持っておきたい革靴です。逆に、フォーマル度の高いシューズだけに、ちょっとカジュアルなジャケパンには合わせづらくなります。 「ウイングチップ」でも内羽根式ならビジネスで使えるフォーマルさがある 「ウイングチップ」とは、トゥの部分に翼(ウイング)のような切り替えがついたデザインが特徴のシューズです。多くのウイングチップはメダリオンで飾られているためカジュアルな印象を受けますが、内羽根式であればスーツにも合わせられるフォーマルなシューズとして認められています。 ただ、プレーントゥやストレートチップよりもカジュアルなシューズなので、日常のビジネスシーンで使用する分には問題ないとはいえ、フォーマル度の高い場所(結婚式に親族として出席するような場所)には向いていません。 ウイングチップの由来には諸説あり、元々は16世紀から17世紀頃にスコットランドやアイルランドなどで履かれていた作業靴がルーツとも言われます。その後、イギリスに渡り狩猟用やタウンユースのシューズと認知されるように。 さらにアメリカに渡り「ロングウイングチップ」と呼ばれるデザインが生まれるなど、国やブランド毎に歴史的な特徴がでる興味深いシューズです。 ジャケパンに合わせるのがベストな「外羽根式」 「外羽根式」の特徴として、内羽根式に比べて靴紐とフィット感の調節のしやすさがあります。そのため外羽根をスーツに合わせる人もたくさんいますし、ビジネススーツに合わせる靴として販売されていることも。ただ、内羽根式よりもフォーマル度は下がるため大事な場面では内羽根式を選ぶのがおすすめです。 外羽根式でスーツに合わせるなら、ストレートチップかプレーントゥに抑えましょう。 ウイングチップになるとトリッカーズに代表されるようなカントリー感やハンティングブーツの印象が強くなります。 また外羽根式のプレーントゥとはいえ、サービスシューズやポストマンシューズのようなカジュアルな革靴もあるため、自信がない人は「外羽根式の時はジャケパン」と認識しておけば間違いありません。 「Uチップシューズ」はビジネススーツに合わせてもOK? 最近ではパラブーツやオールデンに代表されるような、「Uチップ」のデザインの革靴をスーツに合わせて履く人も増えていますが、ビジネスシーンで使用するならジャケパンまでが限界です。 この「Uチップ」とは、その名称が示すように靴のつま先がU字型の蓋のようにモカシン縫いされているデザインの靴の事を指します。イギリスではカントリーシューズとして、フランスでは狩猟用、アメリカではゴルフシューズとして使用されてきたことからも、カジュアルシューズとしての用途が多いシューズです。 ただ、その高い汎用性と堅牢でボリューミーなシルエットから、近年ではファッション性の高い革靴として人気のアイテムとなっています。 「ローファー」はカジュアルをドレスアップしてくれる大人なカジュアルシューズ 脱ぎ履きしやすいことから「ローファー(怠け者)」と名付けられたスリッポンの一種がローファーです。 そのルーツは貴族の書記官が室内履きにしていた、現代でいうスリッパ的な靴になります。そのため、やはりビジネススーツに合わせる靴でないことは確かで、フォマール度は低め。 とはいえ、カジュアルでちょっと大人っぽさを出したい時、ジャケパンでリラックスさを出したい時、いろいろな場面でアクセントになってくれる人気のアイテムです。ローファーを上手く使えるとおしゃれの幅がグッと広がることも間違いありません。 ファッションは掛け算です。キチッとした髪型や服装でいたとしても、足元が0点やマイナス点であれば全てが台無しになります。 特に靴は歩きやすさの機能性を求めたり、消耗の激しさだったりから、ついつい疎かになりがち。それゆえに靴のフォーマル度を知っているだけで、装いの安定性も増す上に周囲と差を付けやすいアイテムと言えます。大人らしいTPOを意識すれば、「その場に適した装いをしている」という自信にも繋がり、生活を豊かにしてくれるでしょう。 TEXT/宇田川雄一 PHOTO/shutterstock