「ストラトス」や「デルタHFインテグラーレ」といった名車で、かつてモータースポーツシーンを席巻したランチア。そのせいか、イタリア・トリノを本拠地とする1906年創業の名門は、走りが研ぎ澄まされたスポーツカーを得意とするブランドと思われがちだが、実はさにあらず。イタリア元首の公用車に使われていたことからも分かる通り、本来は高級車作りを十八番としている。
ランチアは戦前から、他に先駆けて新たなテクノロジーを次々と導入。現代のクルマでは一般的となったモノコックボディや独立式サスペンション、V型エンジンなどを世界で初めて採用したほか、量産車に風洞実験を経て編み出したボディデザインを導入するなど、さまざまな分野で他の一歩先を行くブランドだった。
そうしたクルマ作りの手法もあってか、ランチアは生産のムダを省いたり、コストダウンを徹底したりといった経営の効率化が苦手だったようで、1955年に一度、倒産を経験。その後、経営者交代により新たなスタートを切るものの経営状況は上向かず、1969年、同じイタリアの巨大自動車企業であるフィアットグループの傘下に収まる。