「カーフ」「キップ」「ステアハイド」今さら聞けない牛革の種類

「カーフ」「キップ」「ステアハイド」今さら聞けない牛革の種類

レザーの中でも最も多く使われている牛革は、加工のしやすさや耐久性が高いだけでなく、「食肉の副産物」として手に入る世界中でもっとも多く流通されている革です。ただ、牛革にはいろいろな呼ばれ方があるのは知っていましたか?

 

中でも「カーフ」という言葉は有名で一度は聞いたことがあるかもしれません。ただ、他にもさまざまな牛革を指す言葉があります。実は牛は生育年齢や性別によって名称が細かく細分化されています。今回は中でも代表的な「カーフ」「キップ」「ステアハイド」という3つの牛革の種類につい紹介していきます。

■上品な表情が特徴の高級品「カーフ」

生後6カ月までの仔牛の原皮を使った希少価値の高い最高ランクの革。生まれたてなこともあり傷が少なく、薄くて軽い上に繊維構造がきめ細やかなため銀面(革の表面)の手触りが最上級。上質な質感のため高級靴のアッパーや鞄、革小物などラグジュアリーな革製品に使用されることが多いです。

 

ちなみに、生後3カ月までの革を「ベビーカーフ」と呼び、「カーフ」よりもきめ細やかでさらに上級の革として分類することがあります。

△タンニンなめしと染料のみで仕上げているこの革はイタリア トスカーナ地方に100年以上続くタンナー”コンチェリア・グイディ&ロゼリーニ社”製のカーフ。
△牛革の風合いを活かす製法ながらツルッとした手触りと少しムラのある銀面が特徴。ガンゾの長財布/5万5000円(ガンゾ 本店)

■バランスの取れた高級レザー「キップ」

次は生後6カ月〜2年までの牛の原皮を使った革が「キップ」です。カーフに比べて繊維の密度が高く少し厚手で丈夫なバランスのいい革になります。また、加工法にもよりますが、使っていくうちに艶が増していくため経年変化を楽しめるのも特徴。シボ感を生かした高級革として革製品に使用され、しなやかで手の馴染みがいいため、カーフに比べて中性的な雰囲気も魅力。ちなみに、海外では「キップ」も「カーフ」と分類されることがあります。

△植物の樹皮や葉などから抽出された渋を利用してなめされた、キップスキンのベジタブルタンニングレザー。
△銀面のシボは使い込むほどにあたりがつきテカリも出てくる経年変化を楽しめる革。

■無骨で耐久性に優れた「ステアハイド」

食用のため生後3〜6カ月以内に去勢し、2年以上育ったオス牛の原皮を使った革が「ステアハイド」。去勢することで性格が穏やかになり牛同士が喧嘩をしなくなるため、傷が少なく程よく肉が引き締まり、安定して流通される代表的な牛革です。

 

「カーフ」や「キップ」に比べてキメの細かさや柔らかさは劣りますが、その分、銀面は丈夫で耐久性も優れています。野球のグローブやライダースなどで使われるなど、使い込むほどに馴染み“味”が出てくることが魅力の革です。

△国産のステアハイドのヌメ革を製品化し後染め。ヴィンテージ感が出てようやく程よい硬さになるくらい丈夫な革
△無骨な革の質感はクラシックなヴィンテージな雰囲気を持つ真鍮との相性がいい。クランプのベルト<上>1万2100円、<中>1万2100円、<下>1万1000円(池之端銀革店)

■番外編:経年変化を楽しめる最高級レザー「ブッテーロ」

年齢によって名称や特徴が変わってきますが、革は部位によっても特徴は大きく変化します。中でも「ブッテーロ」と呼ばれる革は、ステアハイドのショルダー部分のみを加工している、希少性の高い最高級の革と言われています。

 

イタリアのトスカーナ州・フィレンツェにある老舗タンナーのワルピエ社で、伝統的な技法により時間を惜しむことなく作られ、さらに、一頭の牛から取れるショルダーの部分は限られているためとても希少性の高い革となります。ハリとコシがありながらツルっとした銀面はエレガントな表情が特徴になります。

△イタリアのトスカーナはタンナー数が世界一の革の名産地。経年変化を楽しみやすいヌメ革の「ブッテーロ」
△丈夫なヌメ革は使っていくうちに光沢を持ち飴色に経年変化。レディオアオーダーの長財布/4万1800円(レディ オア オーダー)

■まとめ

およそ200万年前の旧石器時代から使われていたと言われる皮革の歴史ですが、靴、カバン、財布、名刺入れ、手袋など現代のファッションにおいても革製品は欠かせないアイテムになっています。

 

牛革だけでも「カーフ」「キップ」「ステアハイド 」と細分化されているところに革の奥深さを感じます。ファッションもネットで買い物する時代。文字だけで判断することが増える中、一番メジャーな牛革を知ることは、ファッションを楽しむ上で欠かせない知識になってくるでしょう。



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