Instagramに通じる、今も昔もカメラ好きが憧れる銘機『ハッセルブラッド』

Instagramに通じる、今も昔もカメラ好きが憧れる銘機『ハッセルブラッド』

日進月歩の技術開発が続くカメラ業界。各メーカーから毎年のように発売される新製品は、高速連写、AF追随、高解像度ほか、4K動画などのスペック値が向上。プロ、ハイアマチュアを想定して作られたモデルでも、子供の撮影や旅行の記録を主にするようなサンデーカメラマンが手にするようになった。もちろんこれは高性能・高機能カメラが、一般ユーザーでも扱いやすくなったから。

 

一方で、Instagramでは「#デジタルでフィルムを再現したい」(投稿95.7万件※)、「#オールドレンズに恋をした」(投稿48.9万件※)、「#フィルムカメラに恋してる」(投稿40.7万件※)などのハッシュタグが注目を集めるなど、アナログライクな写真が人気だ※投稿数はすべて2021年5月31日現在のもの)。

後世に語り継がれるアナログ中判カメラ

スウェーデン生まれの「ハッセルブラッド(Hasselblad)」は、プロ御用達のカメラブランドとして長く愛され続けてきた。中判のブローニーフィルムを使用し、6✕6スクエアフォーマットで撮れる写真は、今のInstagramにも通じるものがある。

筆者のハッセルブラッドは写真家だった叔父から引き継いだもの。完璧なコンディションとは言い難いが、それでも叔父は専門店で修理をしながら使い続けてきた。

 

ハッセルブラッドは一般的なカメラと違い、腰の位置にカメラを構え、上から覗き込むようにして撮る「ウエストレベルファインダー」を採用している。左右が反転して写るので、構図を決めるには慣れが必要だ。でもこのスタイルが“ただものじゃない”感を出し、「かっこいいな」と子供ながらに思っていたことを覚えている。

ハッセルブラッドの標準レンズは80mm。35mmのフルサイズカメラだと50mmに該当する。スウェーデンのメーカーだが、レンズは西ドイツのカール・ツァイス(Carl Zeiss)が請け負ってきた※一部、東ドイツのカール・ツァイス・イエナ(Carl Zeiss Jena)も。

 

普通のカメラならとくに気にせずレンズ交換が行なえるが、ハッセルブラッドはシャッターを巻き上げた状態(チャージした状態)で着脱する必要がある。この手順を間違えると、元の状態に戻すことができず、専門業者に依頼することになって、修理費もかさむ…ので、注意が必要だ。“ハッセルブラッドのお作法”とも呼ばれ、「難しい」「ハードルが高い」と言われるのもうなずける。

叔父から受け継いだハッセルブラッドは、1970年から1989年に製造された「500C/M」、1988年発売の「500ELX」で、正直、使いこなせるほど“お作法”には慣れていない。以前、本ジャーナルで紹介した「ペンタックス67(PENTAX※通称バケペン)」のほうが扱いやすいのだが、舶来製のハッセルブラッドへの憧れを常に抱き続けている。

ハッセルブラッドがなくても、スクエアフォーマットは楽しめる

デジタルカメラ全盛の時代に、ハッセルブラッドのようなカメラを手にする人は、よほどのカメラ好きか、写真家、もしくは筆者のように単純に憧れをもっている人だろう。とはいえ、アナログカメラは撮った写真をその都度確認することはできず、フィルムや現像代も馬鹿にならない。まさに“一写入魂”の心構えが必要だ。シャッターを切る際はもちろん、現像待ちでも「ちゃんと撮れているかな」と緊張する。

 

だが、冒頭で述べたように、Instagramを使えば、デジカメやスマホで撮った後にスクエアフォーマットにしてフィルター加工するだけで、それらしい写真が残せる。そこには緊張も現像代も要らない。

コツは、ちょっと青めに仕上げること。パソコンでPhotoshopやLightroomを使う場合、色調補正とほんの少しのノイズ(粒子風に)を加えれば、ものの数分で完成する。アプリならフィルターを選ぶだけと、もっと簡単だ。

とはいえ、やりすぎには注意。度を超えた加工はノスタルジーを通り越して、「在りし日の思い出」風になってしまうかもしれない……。

TEXT/PHOTO  早坂英之



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